生きている!とカラダ中の細胞が叫び出す映画 『戦慄せしめよ』 

橋村小由美(「フォーラム仙台」支配人)

 2022年1月。2年ぶりの東京、豊田利晃監督の新作映画『戦慄せしめよ』公開初日。この2年余「小説よりも奇なり」な毎日だったが、東京都が新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言を国に要請するか検討していたこの日は新宿でさえ人がまばらで、ゾンビ映画の中にいるようだった。

 『戦慄せしめよ』は現代音楽家・日野浩志郎と太鼓芸能集団・鼓童による楽曲群を佐渡島で撮影した音楽映画である。雲が、夕日が、波が、木々が、風が、鼓童の奏でる一打一打が、何よりも雄弁で、身体中に響き渡っていく。流刑地であった佐渡島に漂う時の権力に抗った者たちの想いが乗ったかのような浄らかで凛とした空気が作品全体を纏い、近年の豊田作品の集大成である。

 鼓童メンバーが「この映画の撮影で、止まっていたことが動き出した」と語っていた。私もこの小旅行で、以前の生活が戻った気がしていた。が、人気のない夜の東京で異次元を彷徨っている感覚に再び陥っていると、「生きてやる」と細胞が叫び出していた。

『戦慄せしめよ』
監督・脚本:豊田利晃
撮影:槙憲治
音楽・出演:日野浩志郎/太鼓芸能集団 鼓童
出演:渋川清彦
2021年/89分


<レビュアー・レコメンダー>

橋村小由美(はしむら・さゆみ)/仙台生まれ。大学進学を機に山形へ。市民活動から誕生した映画館「フォーラム」に出合い、学生アルバイトとして入社、大学卒業後、正社員に。フォーラム盛岡の支配人を経て、1999年のフォーラム仙台オープンより同支配人。現在は仙台駅東口のチネ・ラヴィータ支配人を兼務。


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仙台に暮らし、活動するさまざまな方に、「人生の一番/最近の一番」を教えていただく企画です。