2022年9月23日から10月10日にかけて、「仙台駅前で焚火をする」という、ありがたくかつなかなかに不可思議な体験をさせて頂いた(※)。のべ931人の方々が参加した企画となり、各所でちょっとだけニュースになったので、すっかり「焚火さん」とか、人によっては「おい、焚火」とか呼ばれる日々で。はい。
そんな訳なので、多分「焚火系(なんだよ、焚火系って?)のテーマの期待があるのかな」と勝手に思っているが、僕はへそ曲がりなのでそういった期待を裏切ってしまいたくなるのです。
そんな僕がレコメンドするテーマに、Underworld(アンダーワールド)のライブDVD『Everything, Everything』を選んだ。
Underworldは、イギリスのエレクトロニック・ミュージックグループ。『Everything, Everything』は、1999年に行われたワールド・ツアーの模様を収録したDVDだ。2000年代初頭のダンス/レイブカルチャーの熱量を感じられる一枚である。
とにもかくにも、2000年の初冬、20代の僕は、幕張で行われたライブイベント「electraglide」で来日したUnderworldの音楽で踊り狂っていた。
それから20年が経って、2022年の初冬、僕は、しんしんと雪の降る秋保の山奥で焚火の火を見つめていた。「everything, everything…」とボソボソ口にしながら。
僕にとってこの二つにあんまり違いはない。
それどころか、ほぼ同じ体験とすら言ったって良いのだ。
その事を説明するのは難しい。
ただ、2万人とダンスしながら周囲の空間と音楽と確かに溶けあいながら感じることと、焚火を眺めながら星の光や夜の暗闇を浴び、何か生き物の視線を背中のあたりに感じながら火の前で佇むこととは、僕にとっては同じ体験の違った表現でしかないように感じる。
それを僕は「対話」と呼ぶかもしれない。
一緒に焚火を囲んでいる人との対話。2万人の他人と踊りながら一瞬を共有する対話。星空との対話。自分との対話。
少し孤独を感じるようなそんな時に、僕は、800年ほど前に「南無阿弥陀仏」と唱えて農村にいた親鸞などを、隣にかすかに感じたりもして。別に仏教徒でもないけれど。
いま僕の目の前に届いている星の光が、何万光年も遥か遠くから届いたものだとすれば、親鸞であれ誰であれ、数百年の時間的隔たりなど誤差でしかないような。
それは「恍惚」と言ったらよいのだろうか。いや、恍惚というよりは「確かに繋がっている」という「安心」みたいな感覚に近いかもしれない。僕にはそれが、仏教的に言うところの「一即多、多即一」、あるいは「ホールネス(全体性)」と邂逅(かいこう)しているという、そんな感じなのではないか、と思ったりするといったら大袈裟でしょうか。
なんにせよ、僕は、そういったものに触れたくて、極寒に揺れる火を今日も眺めるのだ。
自分にとって他人と溶け合った原始的体験とも言えるライブを思い出し「everything, everything…」と、人には聞こえないくらいの小声でボソボソと歌いながら。
※青葉通仙台駅前エリア社会実験「MOVE MOVE」のプログラムの一つとして実施。