かつて地域とは、暮らす人たちがともに汗を流し、ともに平穏を願い、ともに喜びを分かち合うところでした。人々の強いつながりの力となってきたのが、民俗芸能です。舞いやお囃子に心踊らせながら、人々はそこに祈りと願いを込めてきました。そして今、都市化の中で地域が変貌する中にあっても、舞い続ける人たちがいます。民俗芸能をかけがえのない宝として応援する人もいます。長い時を越えて受け継がれてきた芸能に何を見出しているのか、その声を聞きました。
すぐそばにある民俗芸能を楽しむ
この春、仙台市内で開催された神社やお寺の祭りには、数年ぶりに人が戻ってきた。緑に染まる境内で、人々は久しぶりに披露されるお神楽(かぐら)や田植踊(たうえおどり)に、なつかしいものを見つけたように足を止め、座り込んで見入る。こうした民俗芸能を、仙台市文化財課の職員としてサポートするのが沼田愛さんだ。「仙台の良さはマチとムラが近いこと」と話す沼田さん。私たちが暮らすすぐそばに、江戸時代からの民俗芸能を伝える人々がいる。その楽しみ方をうかがった。