フィンランドのテーブルウェアシリーズ『Teema』
――究極の北欧シンプルデザインから学んだこと

梅田 弘樹(デザイナー、東北工業大学ライフデザイン学部産業デザイン学科教授)

 1997年末にそれまで勤めていた会社を辞めてフィンランドの大学に留学し、以来7年間そこに住んだ。なぜフィンランド?と多くの人に問われるが、一言で説明できるほど人生は単純ではない。それでも時に話を単純化する必要に迫られて、あるいは単にカッコつけて、「僕をフィンランドに導いたデザインです」とよくこれを挙げた。

 「フィンランドデザインの良心」とも呼ばれるデザイナーKaj Franck(カイ・フランク)がフィンランドの老舗陶磁器メーカーArabia(アラビア)のためにデザインしたテーブルウェアシリーズTeema(テーマ/ティーマ*)は、1950年代のリリース以来、僕が渡フィンした時点でも50年近く、2022年の今年70年目を迎えてなおバリバリの現役プロダクトとして、人々の暮らしをさりげなく彩り続けている。表面的な造形の新奇性に走るのではなく、合理と機能の表現としての形態を誠実に追究した結果として、時代や地域を超える普遍性を備えるに至った、プロダクトデザインの理想形――といったあたりが、この名作デザインの一般的な評価だと思うが、個人的にはこれに加えて、禁欲の徹底の先に立ち現れる「詩情」のようなものが、これを他のモダンデザインと一線を画す存在に押し上げていると思う。この暗黙の基本コンセプトは、滞在中に知り合ったフィンランドの若手デザイナーたちの中にも脈々と受け継がれているのを感じた。僕自身も折に触れ「よいデザインとは何か?」と自問してきたが、その答えは結局Franckのこのデザインの中にすでに凝縮していたように思う。帰国後にデザインを志す学生を相手にするようになり、僕が体感したこのデザインの価値を彼らにも伝えたいと思ってやってきた。

 その僕が今なぜファッションデザイン?と多くの人に問われるが、一言で説明できるほど人生は単純ではない。興味の赴くまま、というのが正直なところ(フィンランドに行ったのだって実はそれが大きかった)だが、それでも自分としては、服のデザインにも、フィンランド経験で得たことを注ぎ込んでいるつもり。装うという機能を誠実に果たすシルエット、身につけてわかる素材やディテールの意義、一過性の流行にとどまらない普遍的なスタイル、そしてそれを突き詰めた先に立ち現れるエレガンス…そんなことを目指して。

 *日本では「ティーマ」と表記されることが多いがこれは誤りで、正しくは「テーマ」なんだってば!…と機会あるごとに発信してきたが、僕ごときが吠えたところで全然影響なし。もしかすると日本の販売元締め会社がわざと「ティーマ」を広めているのではないか。「テーマ」だとネットで検索した時に、すでに「主題」という意味で日本語に定着している言葉と区別がつかないから?

〈レビュアー・レコメンダー〉

梅田 弘樹(うめだ・ひろき)
キヤノン(株)で製品デザイナーを務めたのちフィンランド留学。同国でのフリーランス活動を経て、2005年東北工業大学に着任。教職の傍ら現在はファッションブランドkiyozane(http://kiyozane.com/)を展開中。


【レビュー・レコメンドとは】
仙台に暮らし、活動するさまざまな方に、「人生の一番/最近の一番」を教えていただく企画です。