宮沢橋
連日の暑さ続く中、一息つける曇り空の日。本日は宮沢橋のたもとからスタート。挨拶が終わるやいなや「ここは雀がよく見える場所なんですよ」「この桜、立派でしょう。〈我が家の桜〉と勝手に言って愛でています」と、たちまち瑞知さんのペースにひきこまれます。
広瀬川沿いの遊歩道は瑞知さんの通勤路。自転車で走りながら季節の移り変わりを楽しみます。平行して国道が走りますが、車の喧噪は聞こえず、かわりに鳥のさえずりや川のせせらぎが耳に優しく届きます。歩いて初めてわかる、まちの姿です。
瑞知さんは今年6月に惜しまれつつ閉館した映画館・仙台セントラルホールの支配人でしたが、その他にもラジオのパーソナリティ、まち歩き案内人、杜の都の演劇祭制作スタッフ、元青葉まつり専任委員など、多彩な顔をお持ちです。自称「ミーハー」。色々なことを少しずつ「点」で覚えるのが好きで、「あれ」と「これ」をつなげると面白いのでは?と「妄想」を膨らませるのが楽しいと笑います。
日頃もルーティンに縛られないよう、意識的に色々なことを選択するよう心掛けているとのこと。引き出しが多い理由はこのあたりにありそうです。
日常にある「違和感」にも敏感。学生時代の通学路途中の通りにくい三角地帯を「めんどくさい」と感じていましたが、大人になり、まち歩きの師匠・木村浩二さん(元仙台市文化財課職員)に聞いてみると、昔のまちなみが関係していることがわかり、「めんどくさい」には理由があるのだ、面白い!と思ったそう。「僕はめんどくさいことから何かを見つける専門家」と胸を張ります。
愛宕神社~虚空蔵尊
徹夜で開催準備に奔走した「青葉まつり」は、勤務先だった「菓匠三全」の業務で関わったのがきっかけでした。それまではほとんど興味を持たなかったそうですが、各地に出向き、祭りの先達から話を聞いて学ぶうちに楽しくなり、どうしたら面白くなるかと、のめり込んでいきました。頑張る大人の背中を子どもたちに見せることができる「祭り」はとても大切だと言います。
「愛宕神社」への急な石段を上り、その奥にある「虚空蔵尊(こくうぞうそん)」へ。20代半ばに交通事故に逢い、仕事でミスも。厄落としを思い立ち、東北学院大学近くの神社を訪れたところ、見知らぬ女性から「もっと早くこなくちゃだめ。神様は夕方5時になったら帰るんだから」とダメ出しを受けたそう。その時、自分の生まれ年(寅年)の守り本尊があることを教えてもらい、訪れたのがここ「虚空蔵尊」でした。以来大切な場所に。風の通る「気」のいい場所です。
映画館の仕事が一区切りした瑞知さんに、今後のプランを伺ってみると、以前開催した「まなびにキーノ」をやりたいとのこと。これは様々なテーマで専門家をお呼びし、瑞知さんがインタビュアーとなり、知らないこと、知りたいことを教えてもらうというプログラム。あるようで、なかなかないスタイルです。「専門家に教えてもらうのは、知りたいことがすぐわかって楽ちん。興味がどんどん広がる。質問できるってすごく楽しいよね」と眼を輝かせます。「教えてもらった時の楽しさや感動を伝えたい」という瑞知さん。好奇心の種をまいていきたいと、先を見据え意欲満々です。
掲載:2018年9月20日
- 遠藤 瑞知 えんどう・みずとも
- 1962年、宮城県仙台市生まれ。東北学院大学卒業。さとう宗幸さんが設立した「株式会社T.A.P.」でCM製作、イベント企画を経て、「菓匠三全」で広報を担当。退職後、今年6月まで街なかの映画館・仙台セントラルホール(旧桜井薬局セントラルホール)の支配人をつとめる。元青葉まつり協賛会事務局専任委員。NHK仙台「てれまさむね」の「てれまさんぽ」のお散歩人やJ:COM仙台キャベツの映画紹介、『仙台っこ』で映画コラムなどを担当。「ミーハー」映画批評家、まちあるきお散歩人。現在TBCラジオ「日曜マルシェ」パーソナリティ、KHB「夕方Liveキニナル」城下町の秘密を歩く案内人として活躍。