その2 神谷 未穂(仙台フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター)

その2 神谷 未穂(仙台フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター)

旭ヶ丘(青葉区)
仙台ゆかりの文化人が、街に出かけてその場所にまつわるエピソードを紹介する「まちを語る」シリーズの第2回目。この9月に仙台フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターに就任した、ヴァイオリニストの神谷未穂さんの登場です。仙台フィル定期演奏会の拠点・青年文化センターがある旭ヶ丘の街を歩きながら、お話をうかがいました。
『季刊まちりょく』vol.2掲載記事(2010年12月15日発行)※掲載情報は発行当時のものです。

写真/佐々木隆二

この日は、仙台駅が会場の「杜の都コンサート」(10月15日〜17日、下の写真)のリハーサル。緊張感漂う音合わせが一段落、メンバーと談笑。
▲この日は、仙台駅が会場の「杜の都コンサート」(10月15日〜17日、下の写真)のリハーサル。緊張感漂う音合わせが一段落、メンバーと談笑。
 仙台フィルのコンサートマスターに就任してすぐ、定期演奏会をはじめとして仙台クラシックフェスティバル(せんくら)、仙台駅でのコンサート、リハーサル・練習など、多忙なスケジュールを送っている神谷さん。秋晴れのこの日、青年文化センターでのリハーサルを終えたところを散歩にお誘いした。

 仙台フィルが定期演奏会を開く青年文化センターがある旭ヶ丘は、いわば神谷さんの仙台生活スタートの地と言ってもいいだろう。神谷さんは、「初めてここ(青年文化センター)に来たときに、隣に公園が見えたのがすごく嬉しかったんです」と笑顔を見せる。

 「隣の公園」とは、憩いの場として市民に親しまれている台原森林公園のこと。

 神谷さんは、山も海も近くにある古都・鎌倉で育ったからか、「緑や水のあるところ」「歴史のある街」が好きで、おのずとそのような街に住むようになってしまうのだという。ホールの近くに公園があるのを喜んだというのも納得だ。
 神谷さんは、東京の桐朋学園大学を卒業した後、留学のためにドイツのハノーファーに5年間住んだ。ハノーファーは中世から栄えた街だが、第二次大戦中に空襲を受け、広島と姉妹都市にもなっている北ドイツの主要都市だ。
 「勉強していた国立音楽大学の裏が森になっていて、森を歩いて大学に通ったりしていました」。ドイツの森と聞くと、思わずロマンティックな光景をイメージしてしまうが、現実はというと……。「森の中に野ネズミがいて、大学の建物にも入ってきちゃうんです。学内のコンサートでも、まもなく開演ですというときにネズミがさーっと通ったりして(笑)。そのハノーファーの森と、台原森林公園の風景がとても似ているんです」と、神谷さんは言う。
10月15日(金)、仙台駅2階で開催された「杜の都コンサート」(主催:東日本鉄道文化財団)
▲10月15日(金)、仙台駅2階で開催された「杜の都コンサート」(主催:東日本鉄道文化財団)
建築を見るのが好きという神谷さん。散策の途中、外観がユニークなイタリアンレストランの前で。
▲建築を見るのが好きという神谷さん。散策の途中、外観がユニークなイタリアンレストランの前で。
 公園だけでなく、「杜の都」を象徴する定禅寺通りにも絶賛の声が。
 「すばらしいですよ。メインの道路が広く取られていて木が植えてあるところが、ヨーロッパと似ています。パリだとマロニエの並木道ですよね。立派な通りがあることで、街がレベルアップしているように思います」。
ヴァイオリンは常時携行する。「仙台だと地下鉄も東京ほど混んでいないし、楽器を持っての移動が楽でいいですよね」。
▲ヴァイオリンは常時携行する。「仙台だと地下鉄も東京ほど混んでいないし、楽器を持っての移動が楽でいいですよね」。
 ハノーファーを経てパリの国立高等音楽院に進んだ神谷さんは、現在もパリに自宅をもつ。そんな外国生活が長い彼女ならではの視点だが、そのような話を聞くと、いつも見慣れた景色がとたんに新鮮味を帯びてくるから不思議だ。
趣味の映画鑑賞や読書について語る。「仙台に来る前、伊坂幸太郎さんの『ゴールデンスランバー』を読んですごくおもしろかったです。仙台の街に馴染んだところで、もう一回読み返してみようかな」。
▲趣味の映画鑑賞や読書について語る。「仙台に来る前、伊坂幸太郎さんの『ゴールデンスランバー』を読んですごくおもしろかったです。仙台の街に馴染んだところで、もう一回読み返してみようかな」。
 取材時、神谷さんはちょうど仙台で住む家を探している最中。フランス人の音楽家(チェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者)であるご主人はお寿司が大好きで、海の幸が豊かな仙台で暮らすことを心待ちにしていると聞いた。
 「私も主人も車を運転しないので、地下鉄の駅徒歩5分以内ぐらいで探しているんですけど。どこかいいところないですか?」と言いながら、旭ヶ丘の住宅地で「モデルルーム公開中」の看板に目をとめる。
 そんな神谷さんは、仙台に来て、ひとつ夢ができたという。その夢とは?
 「仙台箪笥にとても興味があるんです。デパートで見たときに素敵だなあと思って。でも、お値段がすごく高くてびっくりしました。仙台フィルで頑張ってお仕事をして(笑)、ご褒美に仙台箪笥を買いたいと思っています」。
 街の自然や建築物からインスピレーションや刺激を受けることも多いといい、今までの鎌倉やパリに加えて、仙台が活動の拠点のひとつとなったことで、神谷さんが奏でる音にどのような変化がもたらされるのか楽しみだ。
ハノーファーの森に似ているという台原森林公園にて。シーカヤックも趣味というアウトドア派の神谷さん。仙台近郊の海にデビューするのも間近かもしれない。
▲ハノーファーの森に似ているという台原森林公園にて。シーカヤックも趣味というアウトドア派の神谷さん。仙台近郊の海にデビューするのも間近かもしれない。
神谷 未穂 かみや みほ
札幌市生まれ、神奈川県鎌倉市育ち。6歳でヴァイオリンを始め、桐朋学園大学、ハノーファー国立音楽大学、同大ソリストクラスをそれぞれ最優秀の成績(首席)で卒業。その後、パリ国立高等音楽院第三課程(大学院)を修了し、パリを拠点にソロ、室内楽、オーケストラとの共演など多彩な演奏活動を展開。従姉のヴァイオリニスト・礒絵里子とのデュオ「Duo Prima」(primaはスペイン語で「従姉妹」の意味)でも話題を集めるほか、各地の学校や福祉施設を訪問してのアウトリーチ活動も意欲的に行っている。2010年9月、仙台フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターに就任。仙台フィル「第九」特別演奏会(12/23)にも出演する。
*仙台フィル/神谷さんのコンサートスケジュールは、こちらのサイトでチェック!

仙台フィルハーモニー管弦楽団公式サイトhttp://www.sendaiphil.jp/

撮影協力:ITALIAN T'S