インタビュー

高校生の文化芸術活動
#04 仙台三桜高等学校音楽部

第75回全日本合唱コンクール東北支部大会(2023年)

文化芸術との出合いの渦中にいる高校生たちにフォーカスを当てる「高校生の文化芸術活動」。活動内容やその魅力、自分自身の変化、そしてコロナ禍における活動の工夫についてなど、高校生たちの思いに迫ります。
今回は、60年以上に渡って合唱に力を注ぐ仙台三桜高等学校音楽部を紹介します。歌う時の表情や口の開き方などの技術を磨き、声と心をひとつにすることを大切に練習に取り組む様子などについて、部長の佃さんと副部長の山口さん、そして顧問の佐藤 亮先生にお聞きしました。

校内での合唱練習の様子

仙台三桜高等学校音楽部の魅力を教えてください。

佃さん:入学式の時に音楽部の先輩が歌う校歌を聴き、美しい曲と歌声に感動しました。三桜高校の校歌は3部合唱になっていて、2番と3番の間に間奏があるのですが、そのメロディがとてもきれいで感動したのを覚えています。そして今では、自分たちの「声」で人の心を動かすことができるところに音楽部の大きな魅力を感じています。歌うことで自分ではない誰かを演じているように感じるところも好きです。
私は小学校から合唱を続けていますが、高校の合唱では自分たちで曲の解釈を行うこと、練習に自主的に取り組むことなどの面白さがあるのだと気づきました。

山口さん:私が感じる音楽部の魅力は、性格も声質も違うのに、合唱すると部員みんなの声も心もひとつになれるところです。また、入部したその日から誰でもレギュラーメンバーになれることも魅力です。新しいメンバーが入部してもステージに立つ全員がまとまるよう、一人一人が音楽部の活動へのモチベーションを維持しながら、お互いを気遣い、高め合って活動を続けています。
私自身、これまで合唱の経験はありません。でも中学校での合唱が楽しかった経験や、母が三女音楽部のOGであったことが今につながっているのかもしれません。三桜高校の校歌を初めて聞いた時には、全体的にきれいなメロディが印象的でした。部員数は多くないけれど歌に厚みがありましたし、マスク越しでも部員たちの明るい表情が伝わってくるようでした。

佐藤先生:指導する立場としては、練習を重ねるたびに生徒たちの表現力が増していくことに一番の魅力を感じます。生徒たちは楽譜を読み込むことで曲の解釈を探り、自分たちなりの表現を紡ぎ出そうとします。その試行錯誤が、音楽だけでなく文学や歴史、自然の風景、人々の心などを想像できる力になっていると感じています。

音楽部の活動ではどんなことを大切にしていますか?

山口さん:部員一人一人が楽しく歌えるような雰囲気づくりです。オンとオフの切り替えも意識しています。校歌やクラブソング『つゆひかる宮城野』(作詞:阪田寛夫、作曲:大中恩)を歌い継ぎながら、新たなチャレンジも大切にしています。最近では地底の森ミュージアムで行った「森の響きコンサート」で、宮城県第三女子高校と三桜のOGに参加していただきました。先輩方が歌い続けてきた曲を一緒に演奏したことは、私たちにとってよい刺激となりました。

和やかな雰囲気を大切にした練習

先輩たちから受け継いでいることで他にどんなことがあるでしょう。

佃さん:「どんな時でも周囲の方々への感謝を忘れない」ということと、「学年の壁を超えて自分たちにしか作り出せない音楽を響かせていくこと」です。

山口さん:あいさつと返事をしっかりするという基本的なことと、音楽部の部員として楽しく心を込めて歌うことは先輩からの教えです。そして部員一人一人の意見を尊重することも、先輩の姿から私たちが受け継いでいることです。

部員一人一人の意見を尊重するために、どんなことに気を付けているのですか?

山口さん:音楽を解釈しようとするとき、その曲が作られた経緯や、作者の生い立ち、想いなどを調べることで理解につなげていくのですが、正解がない曲も少なくありません。その答えは多数決で決められるものではないので、納得できる答えに着地できるよう意見を出し合うようにしています。先生の意見や解釈を参考にすることもありますが、自分たちでとことん考えるとまったく違う切り口の意見が出てくることもあって、面白いです。

音楽部に参加してから何か自身の変化はありましたか?

佃さん:普段は内向的で周りに頼ってばかりだった自分が、積極的に話をするようになったことです。笑顔も増えました。

山口さん:歌詞の解釈の仕方や歌い方など、歌への向き合い方が変わったと思います。また、副部長になってから、部員の歌声のいいところばかりを見るのではなく、さらにレベルアップするために改善すべき点を積極的に探すようになったことも大きな変化です。

表現のイメージを楽譜に細かくメモする生徒たち

先生から教わったことでどのようなことが印象に残っているのでしょう。

佃さん:先生はいつも、曲からイメージされる情景や作詞者・作曲者の思いを私たちに伝えてくださり、曲中の登場人物を「演じてほしい」とおっしゃいます。その言葉のおかげで、表現の仕方がわかりやすくなり、歌に込める思いを大切にしたいと考えるようになりました。また、先生は演奏会やコンクールの本番前になると、緊張を和らげるために私たちを笑わせて和ませてくれます。そのおかげで、私たちらしい力を発揮できます。

山口さん:私も佃さんと同じように、先生がおっしゃった「歌うことは演じること」という言葉はいつも意識しています。ほかに、「詩をもとに作られた曲は歌詞にある背景を知り、その時の状況や雰囲気、感情を読み取って歌うんだよ」という指導も印象に残っています。昨年(2023年)の全日本合唱コンクールの自由曲『約束』(作詩:淵上毛銭、作曲:瑞慶覧尚子)は、表現が難しく頭を悩ませることもありましたが、作者の生い立ちを調べたりすることでより深く解釈した上で歌うことができたと思っています。また先生が何度も曲の解釈に付き合ってくださったこともあり、気持ちを込めて歌うことができました。

口の開き方を実践する佐藤先生
表現のイメージを話す先生 生徒たちからは笑いが起きる場面も

先生は、この部活動を通じて、生徒たちにどんなことを感じてほしいと思いますか?

佐藤先生:音楽に対する粘り強い努力を通して、人が持つ様々な感情や背景を理解する力を身に付けてくれたらと思います。言葉や音符に隠れた作者の意図、物語の登場人物の想いを感じる力を身に付けることで、世の中にある多様な想いを読み取り、感じ取ることのできる思いやりのある人として成長してほしいと思っています。

細かな表現を考える時の生徒の姿勢は真剣そのもの

コロナ禍での部活動はどのように乗り切ったのでしょうか。

佐藤先生:活動中は常時マスクを着用するようになり、雪が降る日も窓やドアを開放。1時間に1度は手指を消毒して三密の回避を徹底するようになったため、それまで行っていた柔軟体操や表現方法を確認するためにお互いに向かい合って歌う2人1組の練習は、まったくできなくなりました。部員同士のソーシャルディスタンスがそのまま心の隔たりやモチベーションの低下になるかと思いましたが、生徒たちは様々な制約の中でもできることを見つけて順応していましたね。不便さの中でも気持ちを切り替えて、できることを最大限に実行していく様子には、我々大人が見習うべき点が随所に見られました。現在も生徒たちはマスクを着けて歌っていますが、歌う際にマスクを着けることは、呼吸がしづらくなるだけではありません。表現する上で最も大切な顔の表情が見えないことや発音・発声を明瞭にするための口の開き方が見えないという難点があるのです。
また、コロナ禍で「一緒にやろうよ」と指導する先輩たちの姿勢を見せる機会を失ったのは大きな痛手でしたね。早く何も気にすることなく、明るく、いきいきと、音楽を心から楽しめる日が来ることを願っています。

コロナ禍で使用していたお手製のパーテーション
コロナ禍で行われた、第73回全日本合唱コンクール東北支部大会(2021年)
生徒・指揮者・ピアノ奏者 全員がマスク着用で出場した様子

今後、音楽部の活動を見ることができる機会はありますか?

佃さん:毎年開催している定期演奏会ですね。今年(2024年)は7月20日に名取市文化会館で行います。また、5月22日には宮城県庁1階のロビーで開催される「県民ロビーコンサート」に出演することになりました。前回出演したときは童謡や唱歌など季節の曲を中心に、300人ほどのお客様の前で披露しました。このほか、5月に開催される「第76回宮城県合唱祭」や8月に行われる「第76回全日本合唱コンクール宮城県大会」にも参加します。

今後の目標を教えてください。

佃さん:「全日本合唱コンクール」東北支部大会での上位入賞です!

山口さん:部員全員で楽しく歌うことと、一人一人が成長することですね。そして、全日本合唱コンクールの東北大会で上位入賞し、全国大会への出場を果たすことを目標にしています。そのためには日々のコミュニケーションを大事にして、普段の練習からモチベーションを高く持ち続けることも大切です。聴いてくださる方の心を明るくするために、いつも笑顔で活動することも心がけていきます。

掲載:2024年3月25日

取材:2024年1月

写真提供/宮城県仙台三桜高等学校音楽部

宮城県仙台三桜高等学校音楽部
仙台三桜高等学校の前身である第三女子高等学校にて創立。各種コンクールや演奏会に向けて、週に5日の練習を行っている。「全日本合唱コンクール 東北支部大会」では2021年に金賞を受賞。2022年と2023年には銀賞を受賞した。また2023年には64回目となる定期演奏会を開催。コロナ禍以前は福祉施設や病院、宮城県庁で行われている「県民ロビーコンサート」など、学外での演奏会も積極的に行っていた。