インタビュー

高校生の文化芸術活動
#05 宮城第一高等学校文学部

第26回俳句甲子園 全国高等学校俳句選手権大会 予選の様子(2023年)

文化芸術の分野で、自らの感性を生き生きと表現する高校生たち。今回は、宮城第一高等学校文学部を紹介します。文芸作品のコンクールや俳句・短歌の大会で数々の入賞実績を誇り、他校との合同歌会の交流で刺激を得るなど、積極的に文学表現スキルを磨く同部。生徒は短歌・詩・小説・戯曲などさまざまな作品に取り組みます。文学作品を生み出す楽しさや難しさ、今後の夢などについて、部長の大橋さんと土井さん、顧問の鈴木里美先生にお話を伺いました。

第30回宮城県高等学校総合文化祭 文芸部門 直木賞作家 熊谷達也氏と(2023年)

宮城第一高等学校文学部の活動について教えてください。

大橋さん:部員それぞれが小説や詩といった文学作品を創作し、コンクールなどに参加しています。部全体として特に力を入れているのが短歌です。毎週水曜日には歌会を行い、一人一人が短歌を持ち寄って、メンバーの前で詠み、お互いに感想を伝え合ったりアドバイスをし合ったりしています。みんなの歌から感じるのは、創作物には「“滲み出る”ようなその人だけの色」があるということ。普段話をする口調や口癖がみんな違うように、作品にもそれぞれの「色」が滲み出ています。「色」をつくるのは、その人の人生経験。それまでに読んだ本や人との出会いから構築されたものです。個人の「色」を尊重して自由に創作し、お互いに良いところを見つけて褒め合うことを大切にしています。

土井さん:毎年夏と冬に発行する部誌の制作も、大きな活動の一つです。現在104号続いている部誌は、文学部に長く続く伝統です。制作の時期は自分の作品の創作に加え全体の編集作業で大変ですが、部誌作りを通して、自分の作品が活字になる喜びと責任を感じました。私は、文学部に入る前から小説を書いていたのですが、その当時は個人の趣味としか考えていませんでした。でも、文学部に入ったことで、小説賞や短歌賞に応募して「このコンクールで入賞したい!」という具体的な目標ができ、それまで以上にやりがいを感じながら取り組めています。短歌の奥深さや面白さを知ったのも、部活の先輩に教えてもらったことがきっかけです。私たちも後輩や新入部員に、短歌の魅力や文学作品を生む楽しさを伝えていきたいです。

鈴木先生:文学部は派手な部活動ではありませんが、自分の中のモヤモヤした思いや辛い気持ち、誰かに伝えたい感動などを言葉で表現できるところが魅力です。言葉を紡ぐことで自分の考えを整理することができ、それを読んだ人に感動を与えられます。詩や小説は、一つの世界観を作る「創造主」になったような喜びもあると思います。言葉でうまく表現できないときの産みの苦しみもまた、創作の楽しさではないでしょうか。

宮城県内の高等学校文芸部を対象とした「生徒研修会」にて
作家・大久保開(おおくぼひらく)氏と交流する生徒たち
毎年春に新入部員歓迎の意味も込めて行う校外活動
この散策で感じたことを作品に活かします

どういうところに、短歌の魅力や楽しさがありますか。

大橋さん:短歌は、伝えたいことや情景、感情などを31文字の中で詠む必要があります。リズムの良さと表現の伝わりやすさを両立させることは難しいのですが、「これだ!」という表現を見つけられたときや、他の人の秀逸な表現を読んだときに短歌の面白さを感じます。

土井さん:私は、31文字という規制が生む緊張感と、短歌の持つ自由さが好きです。日常の何気ない情景から、戦争・災害といったテーマまで、さまざまな思いを自由に表現できるところが短歌の素晴らしさだと思います。同時に、短歌を詠んでいると、物事を文学的に表現する難しさも感じています。

鈴木先生:例えば、さっと吹いてくる風の様子や光の加減、どこからか漂ってくる香りなど、これまで気づいていなかった些細(ささい)なことにも敏感に気づいて自分の心に刻み、言葉にする。それはまさに短歌で、心が豊かになっていくところに楽しさがあると思いますね。

大橋さん:そうですね。心に響いた一瞬を切り取って、文字として残せるところも面白いです。例えば、カメラで写真を撮るのと同じような感覚があります。

第18回全国高校生短歌大会(2023年)

活動の中で印象に残っている出来事を教えてください。

大橋さん:部誌が出来上がったときは大きな達成感があります。部誌は、部員が作った短歌や詩、小説などを多数掲載した冊子です。毎号、生徒が主体となって企画を決め、編集までを行っています。例えば103号では、「白」や「無」をテーマに、短歌や詩、小説、戯曲を創って掲載しました。ほかに、自由題や企画もののページもあります。個人的には、今回たくさんの企画ものに参加しました。新しい分野にチャレンジすることは、自分の可能性を広げるきっかけになると思います。

土井さん:同じ部員の作品を楽しむだけでなく、県内や全国の文芸部員と交流したこともいい経験になりました。北海道・東北の文芸部の大会である「北海道・東北文芸大会」や、「全国高等学校文芸コンクール」では、小説、短歌といった部門ごとに分科会が開かれ、全国の文芸部員とやりとりができます。「北海道・東北文芸大会」では、数名でチームを組み、リレー小説を完成させるなど、毎年さまざまな活動を通して新しい創作に挑戦してきました。また、「全国高等学校文芸コンクール」では、それぞれの受賞作品について感想を伝え合う機会があり、自分の考えを持ち、それを自分で表現して伝える勉強にもなりました。

大橋さん:それから、鈴木先生に教えていただいた「短歌が書ける人は小説ができて、俳句ができる人は詩も書ける」という言葉も印象に残っています。短歌なら短歌、俳句なら俳句と、一つのジャンルに夢中になりがちですが、先生の言葉は、さまざまな文学表現に取り組むときに背中を押してくれます。

第20回宮城県高等学校文芸作品コンクール 文芸部誌部門にて最優秀賞を受賞した 部誌『La Plume(ラ・プリューム)』103号(2023年)
部誌は全138ページ 読み応えのある作品集に
第25回高等学校文化連盟全国文芸専門部 北海道・東北文芸大会山形大会(2023年)

コロナ禍で部活動を続けるために工夫したことはありますか。また、どのような変化がありましたか。

鈴木先生:文学部の場合は、作品があればコンクールに参加することができました。歌会や「全国高等学校総合文化祭(2020こうち総文)」などもオンラインで他校と交流でき、研修会もオンラインで行われたので、活動そのものが中止になることはほとんどなかったと記憶しています。デジタルでのやりとりが増えたことにより、部員のマシン操作が上達し、詩を動画で表現するなど創作の幅が広がったと思います。その一方で、コロナが落ち着き、直接他校と交流する機会も戻ってきて、やはり対面で発表し合うことが一番いいと感じる場面が多々ありますね。

大橋さん:毎年行われる文化祭「秋桜祭」で作品を展示しているのですが、コロナ禍で、ここ数年は一般公開されませんでした。おそらく今年からは一般公開が再開されると思うので、足を運んでいただけるとうれしいです!当日は部誌の販売も行っています。

オンラインで行われた他校との合同歌会 歌人 駒田晶子氏と

文学部、文学活動での今後の目標や夢は何ですか。

大橋さん:私の目標は、「宮城県高等学校文芸作品コンクール」の入賞と、「全国高校生短歌大会(短歌甲子園)」への出場です。宮城第一高の文学部は、第1回から第14回まで連続で「短歌甲子園」に出場した実績があり、第7回では準優勝という好成績を残しています。「宮城県高等学校文芸作品コンクール」でも毎年多くの部員が入賞しています。私は、2年生のときは短歌甲子園に出場できず、コンクールの入賞もならずに悔しい思いをしたので、リベンジしたいです!

土井さん:私は「全国高等学校文芸コンクール」での最優秀賞を目指しています。過去2年間、全国で優良賞と優秀賞をいただいたので、2024年はさらに上位に入りたいです。目標に向けて活動することで、以前よりも具体性を持って「作家になる!」という夢を描けるようになりました。

第38回全国高等学校文芸コンクール表彰式 東京 代々木(2023年)
第38回全国高等学校文芸コンクール表彰式の後に森鷗外記念館へ

掲載:2024年3月29日

取材:2024年1月

写真提供/宮城県宮城第一高等学校文学部

宮城県宮城第一高等学校文学部
創立120年以上となる同校の中でも、歴史の古い部活動の一つ。現在は9名の部員が在籍しており、小説、詩、短歌、コラムなど、さまざまなジャンルの文学作品に挑戦し、それらを夏と冬の年2回発行する部誌などで発表している。毎週水曜日には歌会を行い、互いに短歌の技術を磨き合っているほか、コンクールにも積極的に参加。「全国高校生短歌大会(短歌甲子園)」では出場常連校(最多出場)に数えられ、「宮城県高等学校文芸作品コンクール」、「全国高等学校文芸コンクール」でも毎年入賞者を輩出している。