今回の映画祭はどんな方法で行うべきかについては、2020年から継続して議論は行っていたのですが、最終的に、完全オンラインで開催すると決定したのは、開催3ヶ月前の2021年7月末でした。その後、8月初旬に「オンライン映画祭」の開催決定について記者発表を行い、ウェブサイトでも公表しました。組織内ではこの結論に至るまでにさまざまな議論が出て、方針が決まるまでかなり紛糾しました。
山形での秋の大型イベントといえば芋煮会とまるごとマラソンですので、この二つのイベントの開催方針なども参考にしました。それから、海外の映画祭の開催方法などもリサーチして判断材料にしました。
例えばベルリン国際映画祭やカンヌ国際映画祭などは、当時ハイブリッド形式での開催が主流となっていました。私たちもそれを踏まえ、2020年前半まではハイブリッド形式か、完全オンライン形式かのどちらかで調整せざるを得ないと想定して議論していましたが、最終的には、オンラインのみでの開催に決めました。その大きな理由の一つに、山形は市、県全体で重症者の受け入れ病床数が多くないということがありました。映画祭を会場開催することでクラスターを起こす可能性があるなら、それは絶対に回避しなければいけませんでした。
私たちの映画祭は、映画館や市民会館等で開催して、観客の皆様と映画について語り合う場になることが一番大切だと考えています。海外からのゲストの招聘は難しいとは想定していましたが、それでも国内のお客様とともに、小規模でも良いから集まって映画について語り合う1週間を維持したいと、スタッフ皆が願っていましたので、この完全オンラインにするという決断は、大変つらいものでした。
一方、開催に向けて市役所の担当者や市保健所とも相談していたのですが、山形市からはやはり、映画祭を山形市民にとって意義のある形で開催してほしいという要望がありました。オンライン上での上映だけでは、開催が明確な形で目に見えにくくひっそりと開催した印象になりそうなので、何らかの工夫をしてほしいということでした。ですので、まず開・閉会式のみ、出席者や参加者を関係者に限定して会場で実施しました。またSNS等でのオンライン上での宣伝や山形の特産品を使った販促キャンペーンに加え、会場開催時と同等かそれ以上の、市内各所へのポスターやチラシ、PR映像の露出を試み、オンライン映画祭にできるだけ多くの市民に参加いただけるよう周知をはかりました。