仙台市太白区秋保(あきう)町で産出され、大正から昭和初期には全国から注文が殺到したという「秋保石(あきういし)」。採掘された石は秋保電鉄により長町(仙台市太白区)へと運ばれ、そこから全国各地へと出荷されたそうです。コンクリートの普及により一時はすたれていた秋保石ですが、近年にわかに注目を集めています。
私が生まれた地域は秋保と長町の中間に位置しており、子どもの頃はよく秋保電鉄の線路跡を自転車で走り回っていました。また、実家の塀の一部が秋保石で作られていたということもあり、2015年に工場を名取市から秋保町へ移転した際に県道沿いの採掘場を見た時は、何か運命的な再会を感じざるを得ませんでした。
表面はざらざらした感触で素人の目から見ると石と土の中間のような質感、大小ちりばめられた小石や窪み欠けなど、素朴なその表情は、私が普段扱う木材との相性も抜群に感じられました。耐水性、耐火性に優れ、黄色味のある色調も含め、どれをとっても魅力的な素材です。
秋保石はこれまで戦前から1970年代にかけて、仙台近郊の建物などの外壁、塀、階段などで見られてきました。それをもっと身近なものとして生活に取り入れたいと、私の想像は膨らみます。秋保石の魅力である“ざらざら”した触感で穴の空いた表面、凝灰岩という柔らかい特質からなる砂のような感触は、懐かしさと同時に、秋保地域の自然の力や、豊かさを感じさせてくれるのです。
いくつもの縁が重なり合い再び出会った秋保石。今後も注目していきたい素材の一つです。