6歳の時にコンサートマスターにあこがれ、ヴァイオリンを始めた西本幸弘さん。留学先のロンドンから帰国する際、仙台フィルのコンサートマスターの神谷未穂さんとの縁でオファーを受けて即快諾、夢をかなえた。
雪がちらつく1月上旬、定禅寺通に面したカフェで西本さんと待ち合わせた。細い階段を上がるとヨーロッパの趣が漂う店内からジャズが漏れ聞こえてくる。
「その日のことをその日中に整理したいので、毎日定禅寺通を歩いてクールダウンしています。散歩の途中でこの店を見つけたんですが、空間のデザインにこだわっていて、音楽も素敵で落ち着けます。昼はスイーツとコーヒー、夜はワインといっしょに食事をすることも。なかなか休みがとれないので、カフェにいる時や、食事をしたり人と話をしている時が僕の休日です」という。一曲入魂の真剣勝負、だからこそ心身の疲れを癒し『cheer up』(元気になる)ための時間が必要なのだ。
「その日のことをその日中に整理したいので、毎日定禅寺通を歩いてクールダウンしています。散歩の途中でこの店を見つけたんですが、空間のデザインにこだわっていて、音楽も素敵で落ち着けます。昼はスイーツとコーヒー、夜はワインといっしょに食事をすることも。なかなか休みがとれないので、カフェにいる時や、食事をしたり人と話をしている時が僕の休日です」という。一曲入魂の真剣勝負、だからこそ心身の疲れを癒し『cheer up』(元気になる)ための時間が必要なのだ。
カフェを出て勾当台公園に寄り、定禅寺通を歩く。札幌出身の西本さんは肌を刺す冷たい風も気にせず、「勾当台公園は中学の修学旅行で来て、すごく楽しかった想い出があります。仙台は暑すぎず寒すぎず、雪も少ないのに、四季をしっかり感じられます。空が広く感じるのが好きです」と話す。自然が好きで大きな公園のそばに住みたいと、勾当台公園に程近いマンションを選んだ。部屋の窓を開ければ空が広がり、仙台市街が望める。「音楽と自然が調和する感覚や、広い空間を意識して演奏するのが大好きで、カーテンを全開にして練習しています」。2年以上住んだ仙台は「各地に出かけた後、仙台駅に着くとほっとする、我に返れる時間をつくれる場所」で、仙台フィルのメンバーは大きな家族のようだという。「初めはシャイでも壁を越えると本当に温かく抱きしめてくれる感じは、仙台のコンサートに来てくださるお客さんも同じです」
留学していたイギリスでは、日本の大学(芸大)で受けた「都市のアメニティに関する講義」が思い起こされ、その内容を実感することができた。「イギリスは『アメニティ都市論』を基盤に都市がつくられ、その過程で音楽専用ホール、オペラができる歌劇場、多目的ホールが3点セットでそろっています。仙台も街の機能が凝縮されていて、自然や便利さを享受できる空間があり、外で演奏を楽しむ定禅寺ストリートジャズフェスティバルは、ロンドンのプロムスという音楽の祭典に似ています。けれども、仙台の街の真ん中にコンサートホールがあり、自然と共に芸術を享受できる環境がもう少しあれば、と一市民として感じます」
これからの目標は「音楽のつくり手と聴き手みんなが会場でひとつになり幸せを共有できるコンサートを数多くつくること。終演後や、街で気軽にお客さんと会話できる結びつきがあって、それが街の一部になる・・・・・・。音楽や芸術が都市のアメニティになれば、仙台の明日にもつながっていくのではと思います」
歩くたびに、街への愛着を踏みしめ積み重ねてきたのだろうか。生粋の仙台人以上に、仙台の明日を想ってくれているように感じた。
歩くたびに、街への愛着を踏みしめ積み重ねてきたのだろうか。生粋の仙台人以上に、仙台の明日を想ってくれているように感じた。
掲載:2014年3月14日
- 西本 幸弘 にしもと・ゆきひろ
- 北海道札幌市生まれ。6歳よりヴァイオリンを始める。東京藝術大学音楽学部器楽科卒業後、英国王立北音楽院より奨学金を受け留学し、栄誉賞付きディプロマを得て首席で卒業。同音楽院より数々の褒賞を受賞。国内外のオーケストラと共演、エイラット室内楽音楽祭(イスラエル)、ザルツブルク音楽祭、国連チャリティコンサートで招待演奏をおこなう。イギリスにてNISHIMOTO TRIO、イゾラーニ・カルテットを結成し、国際音楽祭、国営放送などにも出演。さらに、映画音楽など数多くのレコーディングへの参加、自身が主宰するニュージャンルグループ『Rain Cats & Dogs』や、《VIOLINable(ヴァイオリンでできること)》をテーマにセルフプロデュースする定期コンサートを行うなど、活動は多岐にわたる。仙台フィルハーモニー管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団など多くのオーケストラでゲストコンサートマスターとして客演。2012年10月、仙台フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスターに就任。