10月中旬、台風一過の秋空の下、きむらとしろうじんじんさんと一緒に歩いたのは、仙台市青葉区の米ヶ袋周辺。3年前の2010年10月、じんじんさんが実際に「野点(のだて)」を行った場所だ。野点といっても、緋毛氈の上でお点前をしてお抹茶をいただくわけではない。まずはド派手なメイクとコスチュームに身を包んだじんじんさんが窯や道具一式を積んだリヤカーを引いて現れる。そして、集まってきた人々が素焼きの茶碗に絵付けをし、その場で茶碗を窯に入れ、焼き上がった茶碗でお茶を味わう・・・・・・というのが、じんじんさんの野点なのである。
野点は公園や路上や空き地などさまざまな場所で開かれているが、よりふさわしい現場を見つけるために、前もってじんじんさんが実施するのが地元のボランティアスタッフと一緒に街を歩く「散歩会」だ。
「野点の最初の頃は、勝手知ったるスタッフを連れて、路上でパァーッてひと騒ぎ起こして帰るっていうやり方でした(笑)。でもやってるうちに、地元の人たちとがっちり組んで、一緒に街を歩いた方が魅力的な風景が見つけられると気づいたんです。例えば仙台なら、よそ者の僕が『広瀬川の河岸段丘の向こうにビルがニョキニョキ建ってる風景はめちゃめちゃいいと思うわ!』って話をすると、地元の人もちょっと心の地図が動いたりする。そういうプロセスを経ていくと、意外な場所を見つけることができて、それが面白いなあと思い始めたんですよ」
「野点の最初の頃は、勝手知ったるスタッフを連れて、路上でパァーッてひと騒ぎ起こして帰るっていうやり方でした(笑)。でもやってるうちに、地元の人たちとがっちり組んで、一緒に街を歩いた方が魅力的な風景が見つけられると気づいたんです。例えば仙台なら、よそ者の僕が『広瀬川の河岸段丘の向こうにビルがニョキニョキ建ってる風景はめちゃめちゃいいと思うわ!』って話をすると、地元の人もちょっと心の地図が動いたりする。そういうプロセスを経ていくと、意外な場所を見つけることができて、それが面白いなあと思い始めたんですよ」
仙台での散歩会ではいろいろな場所が候補に挙がったが、そのなかでも絶対的な存在は“広瀬川とその河原”だったそうだ。
「じゃ広瀬川の河原の中ではどこかね、って話をしてたら、演劇をやってる大学生が、『いつも発声練習をしている、すごく気持ちのええ河原があるんです。横で芋煮とかようやってるし、縛り地蔵っていう地蔵がある』って。で、それは米ヶ袋だろう、って行ってみたら、めちゃくちゃ美しいところで!縛り地蔵さんのところで車を降りて、少し歩いて行ったら対岸に滝が見えて来た。夕暮れ時で、晩になったら月が昇り始めたりして。もう完璧なお茶席じゃないですか!この米ヶ袋の場合は、僕も含めて散歩会の参加者全員が風景に持っていかれたっていう感じでしたね」
と、思い出に浸りながら広瀬川のほとりをぶらぶらしていると、河原はまさに芋煮会シーズン。仙台市民には見慣れた秋の風景だが、「なんかいいですよね。河原に黒く焦げた石がポツンポツンと並んでて、焚火の痕があって。この“ほっとかれ方”はすごい。ええ意味でのゆるさ、これは絶対に仙台市民は死守すべき。こんな大きな都市の一級河川で点々と焚火の痕があるような河原って、他の都市にはほんまないですよ。国宝級の財産!」とじんじんさん。
「じゃ広瀬川の河原の中ではどこかね、って話をしてたら、演劇をやってる大学生が、『いつも発声練習をしている、すごく気持ちのええ河原があるんです。横で芋煮とかようやってるし、縛り地蔵っていう地蔵がある』って。で、それは米ヶ袋だろう、って行ってみたら、めちゃくちゃ美しいところで!縛り地蔵さんのところで車を降りて、少し歩いて行ったら対岸に滝が見えて来た。夕暮れ時で、晩になったら月が昇り始めたりして。もう完璧なお茶席じゃないですか!この米ヶ袋の場合は、僕も含めて散歩会の参加者全員が風景に持っていかれたっていう感じでしたね」
と、思い出に浸りながら広瀬川のほとりをぶらぶらしていると、河原はまさに芋煮会シーズン。仙台市民には見慣れた秋の風景だが、「なんかいいですよね。河原に黒く焦げた石がポツンポツンと並んでて、焚火の痕があって。この“ほっとかれ方”はすごい。ええ意味でのゆるさ、これは絶対に仙台市民は死守すべき。こんな大きな都市の一級河川で点々と焚火の痕があるような河原って、他の都市にはほんまないですよ。国宝級の財産!」とじんじんさん。
「ただ国宝にしちゃうと管理せなあかんとかあるけど、管理とか保存とか大仰なものじゃなくて、それを地元の人々が“現役として使い続けること”が一番。そして、その風景を“愛(め)でる”感じがあり続けるかどうか。それが、その街の地べたで起こってることと人間の関係を最終的には決めていくような気がして。だから、僕は仙台に限らずどこに行っても、実はその“愛でる”っていうことが街にとっては重要なのでは? と思いながら、風景を見てるような気がするんです」
地元人が忘れがちな“愛でたくなる風景”をじんじんさんと再発見しつつ、この日の散歩は夕方まで続いたのだった。
地元人が忘れがちな“愛でたくなる風景”をじんじんさんと再発見しつつ、この日の散歩は夕方まで続いたのだった。
掲載:2013年12月13日
- きむらとしろうじんじん
- 1967年新潟市生まれ。現在、京都市在住。京都市立芸術大学大学院(陶磁器)修了。1993年から友人たちとHIVとエイズに関するNGO活動を始め、その縁でコミュニティ+アート・センターの運営などを行う傍ら、1995年、その場で茶碗が焼けてお茶も飲める陶芸+お茶屋台「野点(のだて)」を始める。以来、全国各地の路上、公園、商店街、空き地などで野点を実施し、毎年秋になると旅まわりに出かけている。仙台では2009年から毎年野点を開催している(2009年~2011年は仙台市市民文化事業団の主催、2012年から市民で構成する実行委員会による主催)。