インタビュー

市民の文化活動レポート
#02 仙台市民交響楽団

第89回定期演奏会
指揮:佐々木新平
ベートーヴェン「交響曲第8番」(2025年6月)東北大学川内萩ホールにて

 
 
仙台市内では音楽や舞台芸術、ボランティアやNPOなどの多様な団体が思い思いの文化活動を行っています。本特集「市民の文化活動レポート」では、様々な団体の取り組み内容や、活動に込めている想いなどをお伝えしていきます。
今年度は、主に市民オーケストラを取り上げます。第2回目は、今年で創立56周年を迎え、質の高い音楽を目指し活動を続ける仙台市民交響楽団について、団長(打楽器担当)の菊地徹さんに紹介していただきました。

活動内容を教えてください。

毎年6月、11月に行う年2回の定期演奏会が主な活動です。それに向けて、毎週土曜夜または日曜午後に、仙台フィルハーモニー管弦楽団のメンバーをはじめとするトレーナーから指導を受け、練習しています。定期演奏会以外では、仙台クラシックフェスティバルなどのイベントにも出演実績があります。東日本大震災後は、南三陸町の追悼式典で10年間毎年献奏を行いました。

東日本大震災南三陸町追悼式(2018年3月)

この活動(文化・芸術活動)で大切にしていることを教えてください。

幅広い年齢層の団員と共に、質の高い音楽を時間をかけてじっくりと創りあげていくことですね。そのために、日本アマチュアオーケストラ連盟に加盟して、全国の仲間との共演や公演の助成などを受けています。国内の第一線で活躍する指揮者を演奏会に招聘しているのも、楽団が成長する貴重な機会です。
昨年11月の55周年記念演奏会では、“炎のマエストロ”として有名な小林研一郎氏の指揮で「幻想交響曲」等を演奏しました。小林氏が本番の舞台上で曲の情景を説明するなかで、オーケストラ指導を行うという想定外のことがありました。ですが、それで逆にオーケストラの集中力が高まり、一気にアンサンブルが変化しました。終演時には、満員の観衆のスタンディングオベーションが止まらなかったほど。素晴らしい指揮者やソリストと共演すると、自分たちの実力を超えた演奏を届けられていることを実感します。

仙台市民交響楽団創立55周年記念演奏会
指揮:小林研一郎
ベルリオーズ「幻想交響曲」(2024年11月)東京エレクトロンホール宮城にて

これまでの活動で特に印象深いエピソードを教えてください。

先ほどの話の続きになりますが、55周年記念公演でのことです。小林氏が指揮台に上がり、タクトを振ると、情景が目に浮かぶように音楽が紡がれていきました。時間と空間がお客様と一体になったような、特別な体験でしたね。
また、東日本大震災の翌年、2012年1月に、まだがれきが残る七ヶ浜町国際村に行き、大井剛史氏(現・東京佼成ウインドオーケストラ常任指揮者)の指揮で「新世界」を演奏した際は、お客様が涙を流して立ち上がり、拍手を送ってくださいました。「新しい生活への勇気と希望をもらった」という言葉も忘れられず、演奏している私たちも涙が止まりませんでした。
また現在、国内外で活躍されている山田和樹氏、下野竜也氏、角田鋼亮氏、松井慶太氏などが若い時に指導頂き、一緒に音楽を創っていったのは良い思い出です。

選曲で気を付けていることはありますか。

お客様に喜んでいただける楽曲、今まで演奏したことのないチャレンジ曲を中心に、選曲会議で候補曲を検討し、指揮者の意向を確認した上で、団員の多数決で決めています。6月の定期演奏会では、仙台に縁の深い芥川也寸志の曲を取り上げました。日本人作曲家の曲は初めてで、大きなチャレンジでしたね。
ロシアや東欧の楽曲は、比較的華やかな曲で、熱演となることが多いこともありお客様から好評をいただくことがあります。ちなみに11月23日に開催される次回演奏会ではチャイコフスキー、ラフマニノフ、シベリウス、グリンカを取り上げますが、全曲とも作曲家が若い時に作曲した曲を取り上げております。

神谷未穂先生(仙台フィルコンサートマスター)による弦楽器分奏練習(2025年8月)
第90回定期演奏会リーフレット

今後の目標を教えてください。

「楽都仙台」の実現に向けて、「へぇー!アマチュアでもここまで出来るんだね!」とお客様に喜んで頂ける演奏会に挑戦し続けていきたいです。だいたい3年に1度、仙台国際音楽コンクールの入賞者や若手ソリストを招聘し、協奏曲にも挑戦しているのですが、お客様からの評判が良いだけでなく、私たち奏者にとっても大変勉強になる貴重な演奏会になっており、他の地域で活躍するアマチュアオーケストラ奏者からも羨ましがられるほどです。地域との連携や、素晴らしい指揮者・ソリストと共演する機会を得ながら、挑戦を大切に高いレベルでの練習と演奏会を継続していきたいです。

第88回定期演奏会
指揮:松井慶太
ヴァイオリン独奏:デニス・ガサノフ(第8回仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門第2位)
シベリウス『ヴァイオリン協奏曲』リハーサル風景(2024年6月)日立システムズホール仙台コンサートホールにて

掲載:2025年10月14日

取材:2025年8月

仙台市民交響楽団
・団体人数 約70名
・団体創立/1969年
・おもな活動実績
毎年6月と11月の定期演奏会を中心に、音楽イベントなどにも参加。2014年度宮城県芸術選奨受賞、2017年度宮城県「文化の日表彰」など受賞歴も多数。
次回の定期演奏会は、2025年11月23日(日)13:30~、東北大学川内萩ホールにて。指揮に前・仙台フィルハーモニー管弦楽団副指揮者の神成大輝氏を招き、チャイコフスキー交響曲第1番「冬の日の幻想」などを演奏する。