前編「秋田市文化創造館が開館するまで」

―市民が守った元県立美術館の建物―

三富さんのお仕事とNPO法人アーツセンターあきた(以下、アーツセンターあきた)について教えてください。

私はアーツセンターあきたの事務局長を務めています。アーツセンターあきたは、2021年3月に開館した秋田市文化創造館の指定管理者をしています。現在は、その法人と施設の両方の統括役を担っています。

アーツセンターあきたは、秋田公立美術大学が設立した法人で、キャンパス内外のギャラリースペースの運営を担っています。また、地域連携の窓口にもなっており、県内の自治体や企業とも連携して、大学が持っているリソースを活用して、街に貢献できることを事業化し運営することをミッションとしています。

秋田市文化創造館が生まれた経緯を教えてください。

当館は、以前秋田県立美術館だった建物を改修し、新たに市民の企画を実現する文化施設「秋田市文化創造館」として生まれ変わったものです。

秋田市文化創造館の外観

元々、秋田県立美術館は1967年に開館しましたが、2013年に惜しまれながら閉館しました。この美術館機能は、秋田県が久保田城跡・千秋公園のお堀を隔てた場所に新しい美術館を建設し、そこに収蔵品と管理団体が移転しました。

当初、建物は壊す予定でしたが、愛着を持っていた市民の方々から建物を残してほしいという声が上がりました。その後、秋田県から秋田市に建物を引き取ってほしいと要請があったそうです。そこで、2017年に秋田市が市民も巻き込んで活用方法の調査検討を行いました。

その過程をもう少し教えていただけますか?

秋田市は、改修した建物をアートセンターとして活用している他県の先進事例を調査し、さらに、まちづくりや文化芸術に関心のある市民の方々が参加するワークショップも開きました。その中では、作品制作ができるスタジオ機能や世代を超えて交流できる企画、これらを支えるコーディネーターが必要など、市民からたくさんのアイディアが出ました。ここから市民が主体となって新しい活動を作っていく場、創造の場という構想が生まれ、現在に至っています。

アーツセンターあきたとしてはいつから関わり始めたのですか?

2018年からです。その時には、施設の活用法の方向性はある程度固まっていました。その構想を具体的にしていくために、秋田市から管理運営体制や事業計画等の策定業務の委託を受けました。そして、秋田市による公募・審査を経て、2020年6月に秋田市文化創造館の指定管理者に指定され、2021年3月に開館しました。

秋田市文化創造館の概要を教えてください。

これまでの経緯から、当館は「秋田に暮らす人のために、自分らしい表現を探す人のために、新しい活動を生み出す拠点」となることを目指して活動しています。

このコンセプトのもと、当館は機能を定めていない部屋が集合している施設となっています。元美術館という特性は活かしていますが、多機能に活用できるような空間に改修されています。

1階コミュニティスペースはオープンスペースにもなっている

建物本体は3階建てです。
1階は、元は県民ギャラリー(貸しギャラリー)として使用されていたスペースをコミュニティスペースとして、誰でも自由に入り、使える空間として開放しています。また、コミュニティスペースの北側半分は、約40平米単位の区画ごとに有料で借りて、専有利用することもできます。

2階と3階は、美術館時代は展示スペースでしたが、現在はすべてスタジオとして、展示に使用するだけでなく、交流、公演、講演会、トークイベント、映画の上映会など、多機能に活用していただけます。

スタジオは全部で4つあります。例えば、2階のスタジオA1は、以前、藤田嗣治の『秋田の行事』と呼ばれる絵画の大作が展示されていた部屋で、天井が高く、天窓があり外光が入ってくる広場のようなスペースで、多目的に使用できる特徴的な空間となっています。

2階スタジオA1は全面または半面利用ができる

事業はどのようなものがありますか?

当館の主催事業は、トークイベントやアーティスト・イン・レジデンス等を実施しています。

同時に、市民の方々には、この施設を使っていろいろなことに挑戦していただきたいと考えています。一般的な文化施設の中での位置づけだと貸館だけれども、単なる貸館となるのではなく、スタッフがお手伝いしながら市民の企画を実現できる施設であることが大切なことだと思っています。

1階で行われたトークイベントの様子

市民の方々はどのように利用されていますか?

市民からの企画や利用申請は、基本的にスペースが空いていれば、先着順に随時受付けています。2021年10月末時点での申請は、約100件寄せられました。

市民の方々の利用は、元々美術館であったということもあり、展示利用が多いです。その他に、ヨガ教室やマルシェ、講演会に使いたいなど多彩な企画が寄せられています。当館としても、美術館だったという経緯にこだわらず、どこまでどのような活用が可能なのか、ということも開拓していきたいという姿勢でいます。

オープニング特別事業はどのようなことをしたのですか?

オープニング特別事業は、秋田市「文化創造プロジェクト」の一環として、「200年をたがやす」(主催:秋田市、企画・制作:NPO法人アーツセンターあきた)を2021年3月21日から9月26日まで開催しました。

会期は「つくる」と「みせる」の2期に分け、「つくる」はオープンスタジオ期間として、多様な作り手が館内に滞在し、館内だけでなく、街に出て行ってリサーチをしたり、市民とお話をしながら展示の方法を膨らませていったり、滞在制作の過程を見せる期間としました。「みせる」期間では、その集大成を展覧会形式で公開しました。

オープニング特別事業の展示の様子

開館後の2021年4月から10月までのイベントは、市民の方々による利用やオープニング特別事業関連イベントも含めると221件で、月平均で31件でした。とにかく、毎日、何らかのイベントを開催していたことになります。

掲載日 2022年8月9日 取材月 2021年11月

三富 章恵(みとみ ゆきえ)

NPO法人アーツセンターあきた事務局長
1981年静岡県生まれ。名古屋大学大学院国際開発研究科修了。2006年より、独立行政法人国際交流基金に勤務し、東京およびマニラ(フィリピン)において青少年交流や芸術文化交流、海外における日本語教育の普及事業等に従事。
東日本大震災で被災経験をもつ高校生・大学生や児童養護施設に暮らす高校生のリーダーシップ研修や奨学事業を行う一般財団法人教育支援グローバル基金での勤務を経て、2018年4月より現職。

聞き手・構成:菅野 幸子(アーツ・プランナー/リサーチャー)

このインタビューは、文化施設運営や事業のあり方や考え方、コロナ禍における影響や対応方法などについて、東北の文化施設・団体にお話を伺いました。

※記事内容(施設の事業や考え方、コロナ対策含む)や個人の肩書等は、インタビュー当時のものです。