私が最初に本に夢中になったのは、小学生の頃。戦争にまつわる漫画や絵本、資料や手記をたくさん読んでいたことを記憶しています。きっかけは、画家・いわさきちひろさんの絵が好きな母が、赤ん坊の私に絵本を見せていたからのようです。
物心がついていわさきちひろさんの絵本を自分で開いて眺めるようになり、その中に『戦火のなかの子どもたち』と『わたしがちいさかったときに〈原爆の子〉他より』というベトナム戦争と原爆投下を題材とした絵本がありました。それを読み、「こわい、こんなことが起こったらどうしよう」と身近な大人に相談していたようです。
幼い頃の曖昧な記憶でしたが、大人になってから一冊の本を開きフラッシュバックが起きました。広島平和記念資料館に収められている被爆者の衣服や装飾品などの“肌身に直接触れていた”遺品を、写真家・石内都さんが写し出した写真集『ひろしま』の頁をめくり、幼い頃に読んだいわさきちひろさんの絵本や、小学生の頃に図書館で原爆を記録した資料を眺めていた記憶が甦りました。生々しい質感を感じるその写真から、過去にたくさんの犠牲があった上で自分が今を生きていることを意識しました。
私は母から贈られたいわさきちひろさんの絵本を通じて、潜在意識から戦争の怖さに触れ、今に繋がる想いを持てるようになりました。亡き母の想いと共に、世界で今なお続く戦争により犠牲になる子どもたちが、解放されるよう願っています。
一冊の本の出合いがもたらす奇跡を信じて。