ご縁あって松島に足を運ぶようになったのは2021年。私が墨画を描き20年以上過ぎ、墨の世界は「癒しや祈り」の一つ、目に見えないこころや魂こそ大切に描く…そんな役割を感じ始めた頃です。
「松島を素材にした墨画展を瑞巌寺で開催しませんか」と個展のお話を受け、2年の準備期間を頂戴しました。瑞巌寺は伊達政宗公の菩提寺。寺の許可がおり『伊達政宗甲冑倚像』をスケッチ、それがきっかけとなり、その生い立ちや生き様など探求心が広がりました。
直に目にした甲冑像からは、遠く未来を見据えたような包容力が伝わり、もう戦は繰り返さないでくれと言っているように感じ、人と人とが戦うことなく甲冑を付ける必要のない穏やかな家族との暮らしを夢見ていたであろうと思いながら鉛筆を走らせました。
雄島で石碑苔落としのお手伝い、四季折々の境内、遊覧船島巡り、岩出山・米沢・一関などゆかりの地にとことん足を運び、2023年 私にとって初の人物墨画ともなる政宗公を描き上げました。
日本は戦争で愛する者を失う悲しみや貧困を経験し、現代ではいじめの問題、経済的不平等な暮らしなど個々の問題が深さを増しています。「不安の無い世」を願う『伊達政宗甲冑倚像』に今の人々の祈りを込め墨画にしました。
「この絵を描くのにどの位かかるのですか?」とよく聞かれますが、墨を磨って筆を持ってからは下描きもせずあっという間でも、このような2年があり、どんな時も墨画を描いてきた20年があります。
そして自分の手を離れ展示された絵を眺めていると、伊達政宗公の栄光に欠くことはできない愛姫の存在にも光をあてたい、この隣に…という思いが募り、今調べを進めています。
先人の想いが、今を生きる人々に伝わり、生かされますように__
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