
「石」をテーマに仙台・宮城の魅力を紹介してきた「石めぐりとソウルストーン」特集。今回は、連載の監修を務めた越後谷出さんと渡邉曜平さんによるユニット「SASSA」(Sendai Architecture, Statue & Stone Association)とめぐる仙台市中心部の“石さんぽ”です。SASSAの活動の一つ、まち歩きツアーは、気になるものを見つけたら立ち止まり、素材を観察して調べたり、想像を膨らませてストーリーをつくったりしながら楽しむもの。今回は、ツアーでも訪れているスポットや、2人が気になっていた場所を紹介していただきました。
※建物、公園、アーケードはすべて許可を得て撮影しています。
SASSA(Sendai Architecture, Statue & Stone Association)
越後谷出・渡邉曜平
何気なく置かれているからこそ気になる【公園の石】
SASSAは、仙台・宮城を拠点に、市街地や公園など身近な風景を観察して楽しむ活動を行なっています。その一環として、街中の壁面や敷石、彫刻など、都市に使われている“石材”に注目し、それらの観察を楽しんでいます。専門的な知識を持たずしても、市街地で石材を探して、色や模様、使われ方を観察し、好きな石材を見つけては地図や記憶にマッピングして楽しむ、というのがSASSA流の楽しみ方です。
仙台市民の憩いの場である「錦町公園」は、SASSAの石観察のおすすめスポットの1つ。広場には錆色と黒のコントラストが特徴的な石が置かれています。「伊達冠石」(こちらの記事もご覧ください)の形と質感をそのまま生かしたベンチです。さらに、定禅寺通り側には、伊達冠石を中心に据えた石のオブジェが。伊達冠石を4つに割った形状で、断面が不思議な模様を描いています。渡邉さんは「断面のグラデーションが独特で、中をよく見ると、黒一色ではなく赤や青の物質が点々と入っています。じっくり観察するといろんなものが見えてくるんです」と覗き込みます。越後谷さんはオブジェについて、「ただ石を切断して並べたように見えますが、ほんのわずか上に向かって開くように置かれています。どういう法則で4つを配置したのか。周りの石は何を表しているのか。考える時間も楽しいですよ」と話します。
「伊達冠石はとても特徴的なので、意識して見ているとまちの中ですぐに見つけることができますよ」と渡邉さんが話していた通り、まち歩きの途中に公園以外の場所でも伊達冠石のベンチをいくつか発見しました。




まちのアクセントとなる【石の彫刻】
仙台は彫刻が多いまち。中心部には石で作られた作品も点在しています。
「タワービル」の公開空地(一般の人も出入りできるスペース)にある『天の花』は、石を積み重ねたような抽象彫刻を多く発表している空 充秋(そら・みつあき)の作品。優しい曲線をつくった石が天に向かって連なっています。「単純に石を重ねているのではなく、少しずつずらしたり、隙間を作ったりと、見る人に想像させる作品です。彫刻作品は、作者がどうしてこの形にしたのか、どうやって作られているのか、興味を惹かれるところなどを、正解をひとまず脇に置いて、自分なりに想像しながら見ると楽しいと思います」と越後谷さん。


東二番町通りを挟んだタワービルの向かい、「ルナール仙台」の前にも高さのある石の彫刻があります。それが、グルジア共和国の彫刻家、ジュンベル・ジキアによる『魂からわきたつもの』。平成9年に開催された国際彫刻シンポジウムに展示され、同ビルのオープンの際ここに移設されました。「種類や磨き方の異なる石が組み合わされているのがユニークですね」(越後谷さん)。都会的な雰囲気にも合う作品です。


この通りにはもう一つ、石の彫刻作品があります。「メットライフ仙台本町ビル」の前に静かに佇む『女性像』です。石彫作家、鈴木政夫(すずき・まさお)の作品で、丸みのあるフォルムが温かい印象を与えます。「じっくり見るとノミで掘った跡も残っていて、作家の手仕事が見えるようです。バス停が近いこの場所は、ベンチなどもあって憩いの空間になっていますね。この彫刻がしっくりと馴染んでいます」(越後谷さん)。鈴木政夫の彫刻は仙台市野草園にも設置されています。


青葉通りにも大きな石の彫刻がありました。「青葉通プラザビル」の前に設置された岡本敦生(おかもと・あつお)の『地殻体積』です。ぼこぼことした四角形をしていて、穴や彫刻の線なども見えます。「地下から突然湧いてきたようにも見える作品です。小さな窓を覗くと、中に形の違う石が入っていて、ちょっと不気味な感じもします。見ているうちに奇妙な生き物のようにも思えてきませんか」と越後谷さん。上部に見える「リーゼントのような突起物」(越後谷さん)も不思議です。


商店街を彩る【石のストリート】
多くの人が往来する仙台のメインストリート、アーケード商店街にも石がふんだんに使われています。マーブルとは大理石の意味ですが、「マーブルロードおおまち」の床材には、名前の通り大理石を使用。「一般的に〈大理石〉と呼ばれている石材は、実は様々な種類の石材を便宜的にグループ化して呼んでいるものなのですが、ここの石材には、石灰岩や、石灰岩が変成した岩石などが使われています。よーく見ると化石もあるんですよ。人通りが少ない時間帯に歩きながら足元を観察すると楽しいですよ」と渡邉さん。通りの一部には、インド産の岩石「ラベンダーブルー」が使われ、「この石には小さなガーネットが入っているんです」と教えてくれました。




クリスロード商店街の通りは、さまざまな色の石材を組み合わせて作られています。モザイクアートのようだったり、緩やかなカーブを描いていたりと、趣向を凝らしたデザインです。「同じ赤やグレーの石でも、少しずつ色や風合いが違っていて、それが商店街の雰囲気に溶け込んでいますね。なんとマンホールの蓋も同じ石で装飾されているんですよ」(渡邉さん)。アーケード街には、通りすぎるだけではもったいないおもしろさがあります。




歴史&作り手の思いが表れた【石の建築物】
オフィスや飲食店が集まる「仙台第一生命タワービルディング」(以下、タワービル)。全面石貼りの内観には、イタリアの石灰岩、アウリジーナフィオリータが使われています。「ここは化石がたくさんあるんです。ほらここにも!」と渡邉さん。石灰岩はサンゴなどの生物の死骸や殻が海底に堆積してできる場合があり、化石が見つかることもあります。こちらのビルには、厚歯二枚貝の化石など、館内のいたるところにたくさんの貝の化石が発見できます。渡邊さんによると、同じ化石でも石を切る方向によって模様の出方が変わるのだとか。単なる模様だと思っていたものが実は化石だったと知ると、床も壁も特別なものに見えてきます。




広瀬通にある「仙台市市民活動サポートセンター」(サポセン)は、石の使われ方が特徴的です。設計は京都駅などを手掛けた建築家の原広司(はら・ひろし)。京都駅に73種類の石が使われたように、遊び心たっぷりのこの建物にもさまざまな石がデザイン的に用いられています。越後谷さんが気づいたのは、エレベーター付近の壁に貼られた石。フロアごとに組み合わせを変えてデザインされています。「この石はなんだろう」と、背負っていたリュックから石材カタログを取り出す渡邉さん。「石の専門家ではないので、わからないときにはこうやって調べながら想像をめぐらせます。ここは、細かいところにも石がデザインされていて、どこにどんな素材が使われているのか探すだけでワクワクします」。



国分町には、「秋保石」(こちらの記事もご覧ください)を使った貴重な建造物があります。2人とも、通るたび気になって足を留めていたという「志ら梅酒造」の石蔵です。今回は志ら梅ビルの代表取締役、吉岡秀祐さんのご厚意で中を見学させていただきました。
大正3年に建てられたこの石蔵は、かつてここにあった「志ら梅酒造」の酒米や商品を保管する倉庫として使われていました。秋保石を積み上げた素朴な蔵のように見えますが、アーチ状の入口が目を引く和洋折衷洋式のモダンな建物です。大小の蔵がぴったりとくっついて建っており、中の壁は漆喰とモルタルです。「昭和20年の仙台大空襲では、建物の屋根を焼夷弾が突き抜けたそうです」と、吉岡さんが建物の歴史を表すエピソードを教えてくれました。渋みを増した秋保石の色合いも、仙台のまちを見守って来た長い年月を物語ります。一時、取り壊しの話も持ち上がったものの、文化財としても価値のある建物だとして、大切に保管してきたそうです。
また、石ではありませんが、軒の両サイドや雨どいの一部、建物内の通気口の部品には、酒造の名前にちなんだ梅のモチーフが施されていました。「戦争に加えて、宮城県沖地震や東日本大震災などの大地震にも耐えた貴重な秋保石の建物ですね。デザインも含めて職人のこだわりを感じさせます」と、2人は感動しながら見入っていました。




移動の途中、建物の外壁や地下鉄の入り口にも目を留め、使われている石に興味津々だったSASSAの2人。とあるビルでは、白い玉石を敷いた小さなスペースを見つけて、それがまるで枯山水の庭を彷彿とさせるので「スキマ枯山水」と名付けるなど、好奇心旺盛なまなざしでまちを歩いていました。「街中にはまだまだ気になる石が山ほどあります。こうやって“石”に注目してまちを歩くと、いつもとは違った仙台のおもしろさを発見できますよ」。



