ZINE(ジン)。聞いたことがありますか?
自主的に作った出版物のこと。ミニコミやリトルプレス、インディペンデントマガジン、同人誌など、さまざまな呼び方や区切りがありますが、ここではすべてまとめてZINEと呼びます。
何の制限もなく自由に作られ、制作者の伝えたいものがダイレクトに表れるZINE。
知ってる人は知っている、軽やかでディープな世界をご紹介します。
参考文献:野中モモ著『野中モモの「ZINE」小さなわたしのメディアを作る』晶文社2020
協力:前野久美子氏
- ZINEとは何か?キーワードは【自由】であること!
- 仙台でつくられたZINEもたくさん!その一部をご紹介します。
- 印象的なZINE
- インタビュー『仙臺村通信 神戸へ出張編』門眞妙さん
- インタビュー『ESCAPE ZINE』モス田モス蔵さん
- インタビュー『Native Grass』BEAGLE USED & VINTAGEさん
- ZINEに出会えるイベント
ZINEとは何か?キーワードは【自由】であること!
なかみ×自由=
何についての出版なのか? 題材は自由です。
自分の好きなものについて、エッセイ、身の回りの何かについて、他の人へのインタビュー、みんなにテーマに沿った寄稿を募る。強制されるものはありません。
伝えたいことを伝える手段
かたち×自由=
どんな形態にするかも自由です。一枚から何ページまででも全部ZINE!印刷されたものであれば、一部からでも何百部でも。
ホチキスで留めたりひもで括ったり、折ったり、いろんな形があります。
つくりたいかたちと方法で
だれでも×自由=
ZINEをつくる人は、だれかに選ばれた人ではありません。
つくりたいと思った人がつくります。立場も肩書も関係ありません。出来上がったものはおなじ「ZINE」。
この経験はひとりでも、だれかと一緒でもつくりだすことができます。
誰もがジンスタ*! *・・・ZINEをつくる人のこと
仙台でつくられたZINEもたくさん!その一部をご紹介します。
書名/発行者名
ふきながし 05/sifflez
仙台近辺のお店や、レシピ、
CD、映画、本などさまざまな情報が詰まったカルチャー総合誌。第5号となるこの号では「コーヒー」について特集。喫茶店のことからオリジナルのブレンドづくりまで、記事がズラリとならびます。
nottso 02/つれづれ団
12名の案内人がそれぞれ3か所、仙台のおすすめスポットを紹介する情報誌。A2判紙を折りたたむ形でつくられており、広げると地図を眺めているかのよう。新しい場所が発見できること請け合いです。
recipe for LIFE/Kenta“imosen”Aizawa
さまざまなお店を営む17名の、とっておきの一品を集めた“レシピ”と食にまつわる“コラム”集。個性あふれるタイトルを読むだけでも、シンプルながらおいしさの特徴をとらえた挿絵を見るだけでも、次々よだれが出て来そう。
まどをあける/佐藤友理・中田幸乃
それぞれの生活を送る10人によるエッセイ集。コロナ禍で気軽には会うことができなくなった今、暮らしている世界はどう見え、それをどう感じているのか。こもった空気にすっと風が通るように心に染み入る文章ばかり。
仙臺村通信 神戸へ出張編/門眞妙
仙台にある個人経営の書店を漫画で紹介。そこで購入した本、またそれぞれの店主によるオススメの本の紹介なども掲載されていて、コンパクトながらじっくり読みたいつくり。本屋さん探しの助けになってくれます。
ESCAPE ZINE/モス田モス蔵
日々の暮らしを率直に、軽快に、のびのびと垣間見せてくれるZINE。毎号A4一枚にまとめられた中には様々な話題がぎっしり。読後には、仲の良い友人と一緒に遊んだあとのような解放感と充実感があります。
Native Grass/BEAGLE USED & VINTAGE
ジャンルはそれぞれ、魅力的な26名へのインタビュー。一人ひとりの回答から、街の姿がダイナミックに浮かび上がってくるかのようです。インタビューの現場に居合わせているかのような話し口にも思わず引き込まれます。
タイトル:『仙臺村通信 神戸へ出張編』
つくったひと:門眞妙さん
内容:仙台の書店、購入した書籍等の紹介
形態:B6判8ページ
――今回のZINE を作った目的はありますか?
ややこしい流れですが、2018年の一年間、新宿眼科画廊さん(東京)が毎月発行していたミニマガジンにて、仙台周辺について伝える1ページのコラム漫画「仙臺村通信」を連載していました。
2019年末に神戸での本屋イベント(※)に出店することになり、この機会に上記のものをベースにした「神戸の本好きの人に仙台の本屋の事情をお伝えするzine」を製作することにしました。(なので、サブタイトルの「神戸へ出張編」は「神戸へ出張したレポート」ではなく「このzineそのものが神戸へ出張した」というイメージで作られています。)
※「本屋に飽きた本屋の話vol.3(最終回)」旧グッゲン ハイム邸(神戸)
――ZINEというかたちにした理由は?
元々は同人誌の手作り感が好き、というのがベースにありますが、zineという名前を初めて聞いて手に取ったのは10年程前に当時大学生だったイラストレーターの山本悠くんが主催したzineのイベント(※)でした。
そしてzine製作に至る前に個人的に漫画を描ける様になりたいという目標があり、コラム漫画を描くことで練習も兼ねつつ、連載のための取材を口実に普段行かないところや関われないところへも潜り込めるのでは・・・という魂胆もありました。
今回の神戸でのイベントは、本好きの方が集まるものだったのでzineの形態になったのは必然かもしれません。※会場は東京の西日暮里にあったop.00302
――制作の流れはどのようなものでしたか
イベント主催者が友人で、遊びに行くならせっかくなので出店者として参加したいと急遽お願いした経緯があり、一ヶ月程度の限られた時間の中で突貫工事のように作りました。
丁度昨年の9月に「曲線」という本屋さんがオープンしたばかりだったので、そちらへの取材をメインに仙台の本屋を紹介しよう、と内容はすぐに決まった様に思います。
「曲線」さんは顔見知りでもあった甘えもありアポなしの電撃取材でした・・・優しく対応していただきありがたかったです。そしてこういう機会でしかお願いできないと思い、お二人の方にブックレビューを依頼し特集コーナーを組みました。配布は神戸でのイベントと、その後は仙台のお店さんに扱っていただいています。
印刷はコンビニコピーで、自分でホチキスで中綴じしています。
――作ってみて、大変だったところは?
冬の深夜にコンビニを往復するのは身体に堪えました・・・。
ただ、漫画を描くのも、どんなレビューが届くか待つのも、表紙の紙を選ぶのも楽しかったです。コンビニによってコピーの仕上がりが違うということは発見でした。
――実際にこうした形にすることで、想定外だったことや得られたものなどはありましたか?
元々神戸の方に紹介できるだけで満足だったので仙台で配布をする予定はなかったのですが、火星の庭の前野久美子さんに見ていただいたら「販売しましょう!」と力強く言っていただき再生産に至りました。ありがたかったです。イベント出店された高松の「なタ書」さんは店内にこのzineを飾ってくれているという嬉しい情報を頂きました。ブックレビューで取り上げられた本の関係者の方からもご連絡を頂いて。イベントにふらりと参加するだけでなく、能動的に行動してみると、製作物を媒介に人との関わりが広がったり深まったりしていくことが面白かったです。
次は今までの連載分と描き下ろし等も入れた「仙臺村通信」の総集編も発行したいです。
門眞妙
仙台出身、在住。
美術大学を卒業後、絵画作品の制作、発表を続けています。
お気に入りの場所は広瀬川とロイホ。
https://taemonma.tumblr.com/
タイトル:『ESCAPE ZINE』
つくったひと:モス田モス蔵さん
内容:日常を綴るパーソナルZINE
形態:A4判リーフレット(オンライン、ネットプリント)
――このZINEを作った目的は?
これまでにも何冊かZINEを作ってきましたが、その都度の目的は様々です。
ESCAPE ZINEに関しては、はじめに作ったのは2020年4月。今にして思えば、コロナ禍の中、なかなか会えなくなってしまった友人たちに宛てた手紙のような感覚で作り始めました。それまでは、約束をしなくても短い間隔で会っては取り留めもない話や馬鹿話をしていたのに会いたくても会えなくなってしまったので、誰よりも自分自身の為に作り始めた感じでした。みんな元気?こっちはなんとかやってるよ、また乾杯できるようになるといいよね、とかそんな気持ちだったと思います。
――ZINEとの出会いはどのようなものでしたか?また、自分でも作ろうと思ったのは?
私が常日頃から出入りしているパンクの現場には昔からZINE文化があり、ライブ会場やレコード屋、通販の折り込みなんかでも目にする機会があり、自然と出会っていた感じです。バンドありきの世界でこのように文字にしたり、デザインしたりで表現する方法もあるんだなと感銘を受けました。私はバンドをやっていないので、人一倍感じるところがあったのかもしれません。
その流れから、自分でもなにかやりたいな、と考えた時にもともと本やZINEを読むことが好きだったこともあってZINEという媒体を使ってなにかを始めたいなと考えたことが製作を始めたきっかけです。だれでも作りたいなと思えば作れてしまう取っ付きやすさもZINEを選んだ理由だったのかもしれません。
――制作の流れはどのようなものですか?
記事の作成については、主に日記を書くみたいにテキストにして書いたものをある程度溜めてから貼り付けして作っています。日々の生活の中で感じたことや、考えたこと、聴いたレコードとか本のこと、食べたもの。挿し絵程度に自分で描いたイラストなども載せたりしていますし、絵が描けない時は文章メインで作ったりとその時によってまちまちです。
レイアウト等も特にこだわりはなく、その時その時の気分で決めています。ZINEを通じてなにかを伝えたいな、という意識はあまりなくて、それを書いてどうするの?といった自分自身の公開日記みたいになっています。パーソナルジンと言われる形式のZINEも読むのが好きなので、特別に新しい形ではないと思います。
ESCAPE ZINEの印刷は、主にコンビニのネットプリントに登録してSNS上で告知しています。読みたいなと思った人が読みたいタイミングで出力して読める形です。この方法についても、以前から存在するやり方ですが、コロナ禍の中であまり外出できない時期に散歩がてらにでも気軽に手に入れてもらえるのではないかと思って始めました。
ESCAPE ZINE以外にもネットプリント形式で発行しているZINEは全国にあるので、自分自身もその時期、それらをプリントすることを散歩の口実にしていたので、ネットプリントジンいいよ、気軽で安いし、楽しいよ、といった気持ちでした。同時に、SNSにもデータ画像を添付しているので外出しなくても読めるようにしています。
――作ってみて、なにか変化はありましたか?
買ったばかりのパンクの写真集を使ってZINEを作れないかな、と思いつきついでに1時間くらいで作ったのが最初のESCAPE ZINEです。読んでくれそうな友人の顔が数名浮かんだくらいで、誰もこんなの読まないだろうな、けど作りたいから作ろう、とそんな感じで作り始めました。後日、友人に会う約束があったのでプリントして渡したところ、面白がってくれてTwitterで告知してくれました。反応が嬉しくて、日を置かずに作って、ネットプリントに登録して、告知して、みたいなサイクルを繰り返しているうちに少しずつ読んでるよ、次も楽しみにしてるよ、と連絡をもらったりすることが増えていきました。はやいペースで作れる時もあればしばらく時間が空くときもありましたし、常にマイペースで発行しています。
このZINEを作って良かったな、と思った事は、コロナ禍で会えない友人たちと連絡を取るきっかけになれたことです。なにもなくても連絡は取れますけど、なにかひとつ、ささいなきっかけがあれば連絡も取りやすいですし。ZINEに書いてたバンド良さそうだね、あの映画良いよね、珈琲豆のトレードしようよ、ZINEのどこそこで笑った、など。そこから繋がる言葉のやりとりには、息苦しくて、閉塞的で、先の見えない外出自粛期間に於いて、自分自身どれだけ救われたかわかりません。結局は、不安だらけで身動きが取れずにいた私自身のために作り始めたZINEでした。ESCAPE ZINEを作ったことで、これまでに繋がっていなかった方々とも知り合えたこともとても嬉しい事で、なかにはZINEを作っている方もいたりして、お互いのZINEの感想のやりとりをしたりするのも楽しかったですし、とても刺激を受けました。自分が想像もしていない場所まで自分が作ったものが届いている時の感激は言葉にならない嬉しさがありました。
――これからつくってみたいZINEはありますか?
今後は、ペラで発行しているESCAPE ZINEをまとめたもの、特定の誰か(著名な人物ではなく、自分のまわりにいるカッコいい人や面白い人)に焦点を当てたものや、私の本棚、私のレコード棚、のように極端に個人的な何かに特化したZINEとかも作ってみたいですね。個人的に幕末の歴史も好きなので、仙台の幕末縛りのZINEなんかも面白そうです。それから、友人とやっているパンクの企画の時にふたりで作っているH.E.G.ZINEや、個人的に作っているパンクのファンジンMOTHRA ZINEも定期的に作っていきたいなと思っています。
モス田モス蔵
84年製。パンク愛好家。平社員。
MOTHPERDICIO TAPES主宰。
仕事と家事の合間にレコードと文章と黒霧島を貪る日々。たまにZINE作ってます。
Twitter @mothdamothzo
タイトル:『Native Grass』
つくったひと:BEAGLE USED & VINTAGEさん
内容:インタビュー、写真、イラスト
形態:A5判136ページ
――なぜこのZINEを作ろうと思いましたか?
仙台の街でローカルに活動している面白い人ってたくさんいて。そんなに有名ではないかもしれないけど、敢えてこの街を選んだ意味を感じられる人たちというか。そんな人たちがこうしてこの街にいるんだよ、っていうのを提示したかったという想いがあります。お店だったり個人の活動だったりと内容はそれぞれですが、この人といえばこれでしょ!というのが浮かぶ人にインタビューをしました。
――オンラインではなく、ZINEにした理由
ウェブでも読む人は読むと思うし、そのなかで心に残ってくれるものがあればそれはそれで良いとは思うんですが、形にして残すことで「こんなことあったよね」みたいになるのも楽しいですよね。これだけインタビューしたのだからモノにしておかないと勿体ないなと思ったのもあります(笑)。
それと、そもそも一度本を作ってみたかったというのもあって。
ZINEは自主的につくられる読み物。衝動とか、自分の気持ちがないとつくれないもの。そういう、自発的な読み物のかたちに惹かれていたのかもしれないです。自分たちも独立して飛び込んでみたいという気持ちもあったのかもしれません。
――誌面はどのようにして作りましたか?
やっぱり直接話がしたくて、スマホの録音機能を使って会話を全部録音してから、文字起しをして、添削をして、作っていきました。インタビューの相手は元から知っている方が殆どですが、知ってはいるけど話したことは無いという方にもお願いをしています。周りに聞いてみて、この人が推すなら間違いない!というのを辿っていった方もいます。
最初はとにかくインタビューすることだけを考えていたんですが、途中でやっぱり挿絵とかがないと読みたくなくなっちゃうなと思って。それで、イラストレーターの友達にお願いして絵を描いてもらったり、知り合いの写真家と一緒にあちこち回って人や風景などを撮ってもらったりしました。
――実際に作ってみてどうでしたか?
文字起しが想像以上に大変でした。インタビューをしていると、人ってどうしても内容があちこちに飛んでしまうんですよね。話すスタイルもそれぞれ違うし。フリースタイルで会話をしていく中でインタビューを行ったので、情報を抜き出す作業はとても労力が要りました。
楽しかったところは、もともと知っている方にインタビューしたときに、この人にはこんな過去があったんだ、という発見があったところ。インタビューしないと言わないことというか、別に言えないことではないんだろうけど。普段、俺こういうことしてたんだよね、とか、こういう仕事してたんだよね、とかってわざわざ言う機会もないじゃないですか。なので、敢えてそういうことを聞くことで、この人はこういう経験をしているから今こういうことをしているんだなと繋がったというか、分かったのが得られた点というか、楽しかったですかね。
やってみたい、と思ったことはやってみないと、勿体ないと思うんです。予算とか時間とか体力とか、いろいろと考えてしまうところはありますが、そういうことを言いはじめたらきっと何もできなくなってしまうなって。そういう気持ちがあったので、今回ZINEを作ったのは貴重な体験になりました。
BEAGLE USED & VINTAGE
〒980-0822
宮城県仙台市青葉区立町21-1
定禅寺通りすぐ側、立町のメンズ&レディースヴィンテージショップです。
商品はオーナー自らアメリカで一つ一つ丁寧にピックしております。
是非お立ち寄りくださいませ。
ZINEに出会えるイベント
ZINEとはどういうものなのか、ZINEを作るのはどういう感じなのか、きっと少し分かってきたのではないでしょうか。
しかし百聞は一見に如かず。実際に手に取ってみたい!とも思ったのでは?
ZINEの特徴の一つに、制作から配布・販売までをすべて同じ人(もしくはグループ)が担うというところがあります。流通している書籍に例えると、著作者と書店が同じ人という状態。ZINEが欲しいと思ったら、基本的にはZINEを作っている人にコンタクトを取る必要があります。
でも、全く心当たりが無くても大丈夫。一部のZINEは知り合いの書店やZINEの専門店にも持ち込まれているほか(オンライン上で入手できるようにされているものもあります)、誰でも気軽に参加できるZINEのイベントも開催されています。
仙台と盛岡でそうしたイベントを開催している団体・ギャラリーにお話を伺いました。
ブックハンターセンダイ
開催期間:2020.9.11-13
主な開催場所:https://bkhuntersendai.jimdofree.com/およびnoteにイベントページを設置し、TwitterとInstagramで随時情報を公開
取り扱うもの:①インディーズブックのウェブ販売サポート(販売のやりとりは売主が直接行います)、②アートとコトバのコラボリレー企画、③ブクハン図書室、④架空読書会、⑤575言葉遊び、⑥書を持って、町へ出よう(詳細は上記ウェブサイトをご確認ください)
―今回、COVID-19の影響で対面イベントを中止としました。そのため、予定していた企画をウェブ上で9月末まで展開しています。全企画終了後、それらをまとめた小冊子を作成して、秋頃に仙台市内で無料配布する予定です。文芸や、本をつくること、ものづくりのおもしろさを、少しでも、仙台に暮らす本好きな方たちに届けられたらと思います。
●ZINEを取り扱う理由
イベント発起人が、元々自身でつくった物語を手製本にする活動を行い、東京の文芸イベントへ出店しておりました。そこには自由につくられた本がたくさんひしめきあって、作り手がすぐそこにいて、熱気があり、とてもおもしろく感じていました。宮城にはアマチュア文芸作家が自身の作品を発表する場がなく、その場所をつくりたいという思い、また、宮城の街中のみなさんに自由につくられた活き活きとした本を紹介したい思いがあり、今のイベントにつながりました。
●ZINEの魅力とは?
「どんなものにしても自由」なところがあると思います。大きさも、形も、厚みも、仕掛けも。簡単なつくりのものでも、凝ったものでも、なんでもありで、作り手の個性がそのまま出てくるおもしろさがあります。印刷会社さんが提供されているサービスもかなり充実していて、実際に書店で流通していそうな本に仕立てることもでき、それは「自分の本を本屋の棚に並べたい」夢を子供の頃から持っていたなんていう方には、ぐっとくるものがあると思います。
これまでに出会った印象的な ZINE
「カルミラ族の末裔」
著作:伊藤裕美 発行:2017年7月
うつくしい吸血族たちのゴシックロマン。ふたりの人物の手記を行き来して進行する物語、それを反映した装丁。暗い赤の表紙に黒と金の印刷、赤の箔押し。語り手によって変わる書体。世界観を本の形で表現しており、物質としての物語も堪能できる。なにもかもうつくしいです。著者の刊行10周年記念の作品でもあり、文芸の創作をつづけてゆくことへの著者の思いが記されているあとがきにも胸を打たれる本です。
「砂漠にて」
著作:五十嵐彪太 発行:2009年10月
手製の豆本。砂漠にまつわる小さな物語が5編収められています。表紙は布張りで、本文は裏移りのしない厚みのある、ブルーグレーの用紙です。小口の化粧断ちはうつくしく、しっかりと丁寧につくられており、糸で綴じられた本は開きもよく、ちいさいながらに広げて読みやすいものとなっています。
「英単語も学べる超短い物語集 超短語カード2」
著作:紙男、かくらこう、ナヲコ、水島一輝、制作:シキシ文藝 発行:2019年9月
単語帳サイズの本。表には英単語、裏にその単語(日本語)を使用した140字ほどの物語が記されています。今作は4名の作家が2人ペアになってお互いに単語を出題して、それに応える形で物語をつくっています。単語帳のようにバラバラに綴じられたページ。文章の雰囲気から、それぞれの物語がどの作家のものなのか、考えるのも楽しい一冊です。
ART BOOK TERMINAL TOHOKU 2020(ABTT2020)
期間:2020.5.1 – 2020.6.30 作品募集期間
2020.8.1 – 2020.8.23 作品展示販売期間
場所:Cyg art gallery(盛岡市内丸16-16 大手先ビル2階)
取り扱うもの:その年によって様々ですが、ZINE、アートブック、画集、写真集、記録集、絵本、詩集、小説、漫画など、本の形をしたさまざまな表現を取り扱っています。
―2012年、2013年は「ZINE STOP TOHOKU」として開催後、「ART BOOK TERMINAL TOHOKU」として続いています。今年で9回目の開催となりました。
●ZINEの魅力とは?
①見た目も中身も制限がなくさまざまなところ。
流通に乗る本はある程度本の大きさの規格や素材の制限がありますが、ABTTに応募される作品は作り手の思いによって素材や大きさ、製本方法などが本当にさまざまです。大量に印刷されるものとはまた違ったよさがあるように感じます。
②小部数発行ゆえの「ここでしかみられない」「私しか知らない」という感じも魅力的です。
Cyg art gallery は、東北の作家に焦点を当てた企画展を行うギャラリーです。
展示スペースのほか、これまでのABTTに出品されたアートブックなどを取り扱うショップスペースも併設しています。また、レンタルスペースToastも、昨年Cyg内にオープンしました。
盛岡市内丸16-16 大手先ビル2階
11:00-19:00/水曜定休ほか不定休あり(10月からは火曜と水曜が定休になります。)
COVID-19 感染拡大対策として、予約優先でのご案内を継続する予定です。
ご予約はWEBサイトまたはお電話にて。
WEB:https://www.cyg-morioka.com/reserve.html 電話:019-681-8089
注記)Cyg art galleryは2020年に移転しました(移転先住所:盛岡市菜園1-8-15 パルクアベニュー・カワトクcubeⅡB1F)
これまでに出会った印象的な ZINE
今年のABTT応募作品のなかでは、しもかわらさとこさんの「やまなみ」が印象的でした。
なみなみのゴムにとめられた本を開くと、折帖製本で綴じられたやまなみがすうっと伸びていきます。
しもかわらさんが今回の出展コメントに「コロナウイルスの影響で、展示がままならなくなった友人や自分自身を励ましたいなーんて思って作ってみました。」と書いていらしたのですが、本の中のやまなみと、そこに添えられた言葉に落ち着きを感じ、じわっと温かな気持ちになりました。