連載・コラム

せんだいの市(いち)に行ってみませんか?

『季刊 まちりょく』特集記事アーカイブ

『季刊 まちりょく』vol.32掲載記事(2018年9月20日発行)※掲載情報は発行当時のものです。現在の各団体の状況については、ウェブサイト等でご確認ください。

 いま私たちの周りには様々なものがあふれ、売り買いもネット上で簡単にできる便利な社会になりました。その一方で、わざわざ足を運んで「もの」と出あう「市」や「マルシェ」に心ひかれる方も多いのではないでしょうか。それはなぜなのか?今回その秘密を探るべく、市内で開催されている「市」の中から6つを選んで取材してみました。するとそこには、「市」とひとまとめにはできない色々な持ち味や魅力が見えてきました。

せんだいの「市」に行ってみませんか?

 毎月8日と28日に開催されている「市」をご存知ですか?8日は「お薬師さんの手づくり市」、28日は「新寺こみち市」。それぞれ10年目、5年目を迎え、どちらも実行委員会事務局の佐藤正記(ただき)さん、西大立目(にしおおたちめ)祥子さんのお二人が切り盛りされています。「市」開催でお忙しい中、お話を伺いました。

実行委員会事務局の佐藤正記さん(右)と西大立目祥子さん(左)。お揃いのオレンジTシャツは「お薬師さんの手づくり市」2年目を記念して制作したもの。お薬師さんの縁起物「ひょうたん」がモチーフになっています。

「お薬師さんの手づくり市」のきっかけ

 「お薬師さんの手づくり市」は佐藤の発案でした。地域振興を企業だけに頼るのではなく、家庭や地元にある「技」を、「市」という形で「仙台」で売ることができれば、地域の力になるのではないかと考えました。私たちは「市」をイベントだと思っていないので、定期的に開催していくことが大事だと考えています。定期開催なら、売る方も買う方も「市」をあてにできる。生活の中に組み込めれば、暮らしに根付くとの思いがあるので、冬季でも開催。出店者の方からも、冬の開催は助かりますとの声をいただきます。中にはお店を持たずに「市」で販売し生活している方もいて、生き方が変わってきているなと思います。当初10年で出店数100を目指したのですが、1年で達成し、手ごたえを感じました。

「新寺こみち市」の始まり

 「新寺」は、江戸時代の城下絵図にも記載のある、歴史的に由緒ある寺町。静かで緑の豊かな寺の間を抜ける小道があるのですが、人影がまばらでもったいないと感じていました。長い小道を多くの人に知って欲しいと考えていた時に、「市をやったらいいかも」と。それが「新寺こみち市」の始まりです。

開催日へのこだわり

 最初は土、日開催を考えていましたが、薬師堂のご住職さんに相談したところ、お薬師さんのご縁日が8日とのことで、「お薬師さんの手づくり市」は8日の開催になりました。境内を無償でお貸しいただき、実行委員長はご住職さんが務めてくださっています。「新寺こみち市」は、お寺さんにご挨拶に伺った際、お盆の月中旬、お彼岸の月下旬は人出が多いので避けてほしいとのお話が出たので、月末の「28日」に決めました。平日になることも多いのですが他の催しと被りにくく、日市は覚えやすいので徐々に浸透してきました。

二つの市の特色

 「お薬師さん」の方は名前の通り、出店者の方の「手づくり」のものだけになりますが、「新寺」の方は仕入れた物の販売も可能で、古道具なども販売されています。「お薬師さん」は150店舗、「新寺」は約80店舗。「お薬師さん」は人出も出店者数も多い、「新寺」はゆっくりと買い物ができると、各々の市には持ち味があります。「私はここのワカメがいい」「ここのパンが好き」と、それぞれの出店者に常連さんがついています。

今後は・・・

 「新寺こみち市」は、昨年度から始まった公園のリニューアルがあと3〜5年後に完了するため、完了時に新寺二丁目蓮池公園から新寺五丁目公園の全てを使って開催できるように、パワーアップしたいと考えています(現在は半分で開催)。

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日常と非日常が混在 お薬師さんの手づくり市


 この市の魅力は歴史ある「陸奥国分寺薬師堂」境内で開かれていることです。門前の幟を眺めると、お祭りに来たように心が躍ります。所せましと並ぶお店が気になりますが、まずは薬師堂で行われている「縁日護摩(ごま)祈祷」に。札所で護摩木(300円)を求め、名前と願い事を書き本堂へ。日頃は立ち入ることのできない本堂内陣で、ご祈祷とご加持を受けることができます。ご住職のありがたい御法話をいただき、清々しい気持ちで本堂を出ると、人であふれかえり、活気に満ちた市が目の前に広がっていました。一瞬、不思議な感覚にとらわれます。

 人垣をかき分けながら一巡りしている間に、目をつけていた品物は売切れ。買っておけばよかったと後悔しきりですが、また来月と思えるのも「市」の魅力。「市」は単に物を売り買いするだけの場ではなく、そこには自然と会話が生まれます。漬物は作り方を伝授してもらったり、珍しい野菜は食べ方を教わったりします。いつもよりお喋りになるのは「場の力」かもしれません。

国分寺薬師堂の仁王門。この奥で市が開催されています。
奥に見える赤い屋根の建物は仙台市登録文化財に指定されている「鐘楼」(鐘撞き堂)。その周囲にブースが並びます。

お薬師さんの手づくり市

毎月8日 10:00〜15:00
会場:陸奥国分寺薬師堂 仙台市若林区木ノ下3-8-1
仙台市地下鉄東西線「薬師堂」下車 徒歩5分
http://www.oyakushisan.com/
注記)最新情報はウェブサイトをご確認ください。

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いろいろ楽しめます 新寺こみち市


 会場は約350mの長い小道で、その片側に様々なお店がズラッと並んでいます。ブラブラお店を眺めながら一往復もすると、初めてでも常連になった気がしてきます。七ヶ宿中学校の生徒さんたちのブースを発見。先生にお話を伺うと、中学校の体験学習の一つとしてこの「新寺こみち市」に出店。一年のうち6月と11月の参加で、今回が3回目とのこと。生徒さんたちはお揃いの法被を着て、自分たちで作成した町紹介のパンフレットを手に、お客さんの呼び込みや品物の説明をしながら、ふるさとの特産品、野菜や漬物、加工品を販売していました。

雑貨やアクセサリー、野菜やお菓子、海産物、アンティークなど様々な種類のお店が並びます。

 「市」のほかに、楽しい企画も開かれています。若林図書館の「ヤギさんおはなしかい」は2015年より開催されている「絵本の読み聞かせと手遊び」。会場は公園で、空の下で楽しめる企画です。参加した子どもたちは「ヤギさんメダル」がもらえ、参加するごとにシールを貼る仕組みです。5つ集めるとバッチ、12枚の皆勤賞ではバッグがもらえます。近隣の保育園の子どもたちが団体さんで来てくれることもあるそう。またこの日は残念ながらお休みでしたが、宮城教育大学フィールドワーク研究会YAMOIのヤギがやって来る「ヤギさんふれあい広場」もあります。

この日は小雨模様でしたが、約10組の親子連れが参加していました。
若林区のラジオ番組統括プロデューサーの矢尾研二さん。「新寺こみち市」「お薬師さんの手づくり市」どちらも通う皆勤賞の常連さん。

 3月はフリーマーケット的な要素が加わる「蚤の市」、7月は暑いので、17:00から21:00までの夜市「夜参りごんごん」になります。薄暗い中、明かりを灯しての「こみち市」のほか、提灯を下げての仏像見学など、時期ならではの催しが企画されます。

七ヶ宿中学校のブース。お昼前にはガラガラに。

新寺こみち市

毎月28日 10:00〜15:00
会場:新寺2丁目蓮池公園〜新寺小路緑道
仙台市地下鉄東西線「宮城野通」下車 徒歩4分
http://www.komichiichi.com/
注記)最新情報はウェブサイトをご確認ください。

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せんだいの「市」というと思い浮かぶ 仙台骨董青空市


 1654(承応3)年に、仙台藩の2代藩主伊達忠宗公によって創建された、仙台「東照宮」。その境内で毎月第4日曜日に開催されているのが「仙台骨董青空市」です。1984(昭和59)年から始まったこの市には、東北の骨董業者、約20店が集結。陶磁器や、古銭、絵葉書や古地図、おもちゃ、レコード、古布、生活の品々などが並びます。

青空に幟がはためきます。

 一番賑わうのは早朝とのこと。コアなお客さんは開店の7:00前から待ち構えているそう。到着した9:00頃は子どもからご年配の方、また外国の方の姿も見受けられ、初心者には程よい込み具合。お店の方に「これは何?」と質問したり、「穴があるからまけてよ」と値切り交渉をしたりと、思い思いに楽しむ人の姿がありました。

 段ボールに入った大きな「ガラス玉」を発見。気になって聞いてみると、元々は漁業用の「ブイ(浮き)」として使われていたものとのこと。常連だというお客さんは、この「ガラス浮き玉」を何個も庭に転がして楽しんでいるそう。骨董市に来るたびに探していて、本日の品は「これまでにない大きさなのよ」と嬉しそう。取り置きをお願いして次のお店へ向かって行きました。

こちらが漁業用の「ブイ」だった大きなガラス玉。
いろいろな年代の古銭。ちょっとしたタイムスリップ感覚を味わえます。
参道の両脇にお店が並びます。

 おもてなし集団「伊達武将隊」の片倉小十郎景綱と松尾芭蕉に遭遇!近くのJR「東照宮駅」に「街歩きツアー」のお客様を迎えに行くところでした。

昔のお絵描きノートも売られていました。
おもてなし集団「伊達武将隊」の片倉小十郎景綱(左)と松尾芭蕉(右)。場所柄か違和感がありません。
何か言いたげなものたち。

 お店の方に聞いても、何なのかわからない不思議な品もたくさんありました。仙台在住のミステリー作家・三浦明博さんの『滅びのモノクローム』(第48回江戸川乱歩賞)で、主人公が、物語の発端となる16mmフィルムと古いリールを手に入れたのもこの東照宮の骨董市でした。

まさに「掘り出し物」を探しています。
三浦明博『滅びのモノクローム』(2002年8月、講談社刊)
ドラマ化もされました。

 「骨董」には「物語」が秘められています。気持ちにひっかかる「もの」との出あいを求めて、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

仙台骨董青空市

毎月第4日曜日 7:00〜15:00
会場:仙台東照宮 仙台市青葉区東照宮1-6-1
JR仙山線「東照宮駅」下車 徒歩3分
http://kokando.web.fc2.com/aozoraiti.html

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おしゃべりが楽しい 荒町商店街ふろしき市


 仙台の歴史ある商店街「荒町」で毎月第2、4土曜日に開催されている「荒町商店街ふろしき市」。不思議なネーミングが気になりました。主催者である及川酒造店の及川夕子さんにきっかけを伺うと、以前開催していた、荒町商店街に顔馴染みや行きつけのお店を作る企画「夜は荒町で楽しまナイト」だったそう。評判が良く、しまいにはお店に入らないくらい大勢の方が集まるように。一方で夜の参加は難しいという方も多く、昼間のイベントを求める声を受けて2016年4月に始まったのがこの「荒町商店街ふろしき市」でした。

「市」のある日は万国旗ならぬ「ふろしき旗」がはためきます。こちらを目印にどうぞ。
主催者の及川夕子さん。みんなから「アネさん」と呼ばれています。

 ネーミングの由来は「『商店街』と『ふろしき』は、どちらも身近にありすぎて、どう使っていいかわからないですよね。そこでどちらも掘り起こしをしたいと思って」とのこと。着眼点がユニークです。

場所決めに使う「くじ」
この日のワークショップは「あじさいブローチ」作り。30分くらいで完成です。

 会場は及川酒造店の店先です。出店者は売りたいものを「ふろしき」に包んで参加。ビールケースを重ねて作られた土台にふろしきを広げるとお店に早変わり。全部で6ブースで、その内の1つはワークショップブースに。出店者の顔ぶれは毎回少しずつ異なるそうです。

ビールケース1つ分のスペースを、工夫をこらしてディスプレイしています。
かわいい売り子さんがいました。

 広すぎず狭すぎずの空間なので、お客さんはもちろん、出店者さん同士でも互いに行き来しながら話しができるアットホームな雰囲気。「遊びに来ている感じですね。みなさんとのおしゃべりが何よりも楽しみ」「『市』に出店したいけど、敷居が高いと尻込みされる方の初めの一歩にピッタリ」と出店者の方。

 「ふろしき市」の中心的存在が、「お包みの魔法使い」こと佐藤美枝先生。この「ふろしき市」が開催されるという情報をキャッチし、「ふろしきなら、私が行かねばならないっちゃ」と、「ふろしきの使い方」を伝授しに、手弁当で駆けつけます。

「心を折り結び、包む専門家」の佐藤美枝さん。この笑顔に会えるのも「ふろしき市」の楽しみの一つです。
ふろしきバッグ。結び方は美枝先生に教えてもらえます。

 ツイッターで発信される情報を頼りに、秋田、山形、岩手など県外から訪れる方も多く、お隣の岩手県遠野市でも「伝承園ふろしき市」が開催されるようになると、はしごする方もでてきたそう。この日は、仕事に向かう途中に立ち寄る常連さんや、通りがかりに立ち寄る方の姿もありました。

 「大きくせずに、私のできる範囲、目の届く範囲で続けていきたいですね。この『ふろしき市』をきっかけに荒町商店街に来てもらえれば」と及川さん。商店街への深い愛を感じます。

 8月は暑いので休みとのことですが、雨天時は場所を店内に移し、ワイワイ開催されています。気になった方は、ふろしきを持参して遊びに行ってみませんか。

荒町商店街ふろしき市

毎月第2、4土曜日 10:00〜15:00
会場:及川酒造店 仙台市若林区荒町127
仙台市地下鉄南北線「愛宕橋」下車 徒歩5分
022-223-2885(及川酒造店)

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せんだいの街を好きになる プレジャーマーケット


 仙台地下鉄東西線「国際センター駅」の2階にある「青葉の風テラス」。青葉山の緑が臨め、広瀬川を渡る風を感じることのできる、気持ちの良い空間です。ここで2016年5月から開催されているのが「プレジャーマーケット」です。

プレジャーマーケットを手がける田川浩司さん(左)と豊嶋純一さん(右)

 主催はNPO法人都市デザインワークス。街からすぐの自然豊かなこの地域を「せんだいセントラルパーク」と名付け、街中でのピクニックやワークショップを開催するうちに、この場所の魅力を分かち合う仲間が増えて、月1回、のんびり集まるイベントをと始まったのがこの「プレジャーマーケット」でした。

テラスの様子。ガラス越しの緑が心地よい開放的な空間です。
「カワラバン」さんのワークショップの様子。広瀬川の川遊びを体験できます(要申込)。

 「この素敵な場所をもっと多くの人に好きになってもらいたくて、そのきっかけとなるような遊びのプログラムを用意しています」と担当の田川浩司さん。これまでに「コケ玉づくり」「流しの絵本よみやさん」「飛ばせるものづくり」「『コトバコ』づくり」などバラエティに富んだプログラムを提供。歩いて5分ほどの広瀬川周辺では乗馬と川遊びの体験もできます。お客さんだった方が、プログラムの提供者になったこともあり、楽しみの輪が広がっていくのが嬉しかったとのこと。

ワークショップの様子
「パカラッチョ」さんによる引き馬体験。広瀬川河畔を散歩します。

 この日のテラスでもアクセサリーや石のアート作品、おいしそうなパンや焼き菓子が販売されていました。自分たちも「のんびり」楽しんでくださる出店者の方たちに、無理のない範囲で参加していただいているそう。ゆっくり時間がながれる空間に身をおくと、日頃の疲れが消えていくようでした。

2018年のプレジャーマーケットは9月までの開催となります。「せんだいセントラルパーク」を楽しむ人を増やすべく、田川さんたちは新たな企画も構想中とのこと。今後の動きにどうぞご注目ください。

プレジャーマーケット

2018年9月30日(日)11:00〜16:00
会場:青葉の風テラス
仙台市青葉区青葉山2-1外
広瀬川(追廻・大橋周辺)
仙台市地下鉄東西線「国際センター駅」下車すぐ
http://sendai-cp.net/market

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こだわりがあります イチと二市


 片平の青葉通り沿いに2017年8月1日にオープンした「1TO2BLDG.(イチトニビルディング)」は、株式会社BRIGHTが運営する、カフェ、ショップ、イベント会場など多目的なスペースが入った4階建てのビルです。ユニークなビル名には、ここに集う方たちの初めの一歩、二歩目のお手伝いをしたいとの思いが込められています。

スタッフの荒川瞳さん(左)と渡辺沙百理さん(右)

 ここでオープン時から開催されているのが「イチと二市」です。このビルを知ってもらいたいとの思いでスタート。「イチとニ市」のネーミングは、これまたビルの名前からきています。

「イチと二市」はビルの3階と4階が会場です。7月のテーマは「夏の装い・夏の食卓」でした。

 毎回違った楽しみを見つけてもらいたいと、毎月イベントのテーマを決めていて、これまでに「海」「コーヒーと日本酒。」「蚤の市&クリスマスマーケット」「イチと二植物園」「収集と発信」など様々なテーマで開催。出店者さんは、テーマの世界観を共有していただける方にお声掛けして、毎回同じ方にならないように工夫しているとのこと。お客様の顔ぶれもテーマによって違うそうです。

「夏の装い」
「夏の食卓」

 「楽しいこと、新しいこととの出合いを切らさないようにしたいですね」「〈世界観〉をきちんとつくれるイベントを提供し、ここのイベントは何か違う、面白いことをやっていると思ってもらえたら」と、スタッフの荒川瞳さんと渡辺沙百理(さゆり)さん。別な場所に出かけて開催する「旅する、イチと二市」も増やしていく予定とのこと。まだ始まったばかりの「イチと二市」ですが、今後の展開が楽しみです。

イチと二市

毎月開催(日時は変動)11:00〜17:00
会場:1TO2BLDG.
仙台市青葉区片平1-3-35
仙台市地下鉄東西線「大町西公園駅」下車 徒歩2分
http://www.1to2.jp/

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『季刊 まちりょく』は、(公財)仙台市市民文化事業団が2010~2021年に発行していた情報誌です。市民の方が自主的に企画・実施する文化イベント情報や、仙台の文化芸術に関する特集記事などを掲載してきました。『季刊 まちりょく』のバックナンバーは、財団ウェブサイトの下記URLからご覧いただけます。
https://ssbj.jp/publication/machiryoku/