梅雨明けが待たれる7月の仙台。
六華亭遊花さんと待ち合わせたのは、仙台の中心部・クリスロード商店街にある「桜井薬局セントラルホール」。懐かしい雰囲気が漂う、こぢんまりとした映画館だ。
六華亭遊花さんといえば、これまで「かわのめえりこ」の名前でテレビ・ラジオを舞台に活躍し、1997(平成9)年からは「川野目亭南天(かわのめていなんてん)」として、東北弁で噺(はなし)をする落語家としても活動してきた。「最初から落語に関心があったわけではないんです。ラジオ番組でたまたま落語に出会って、そこからです」と遊花さんは言うが、彼女の東北弁の語りになじみがある人も多いはずだ。
六華亭遊花さんと待ち合わせたのは、仙台の中心部・クリスロード商店街にある「桜井薬局セントラルホール」。懐かしい雰囲気が漂う、こぢんまりとした映画館だ。
六華亭遊花さんといえば、これまで「かわのめえりこ」の名前でテレビ・ラジオを舞台に活躍し、1997(平成9)年からは「川野目亭南天(かわのめていなんてん)」として、東北弁で噺(はなし)をする落語家としても活動してきた。「最初から落語に関心があったわけではないんです。ラジオ番組でたまたま落語に出会って、そこからです」と遊花さんは言うが、彼女の東北弁の語りになじみがある人も多いはずだ。
落語家としての転機は今年4月にやってきた。大御所・三遊亭遊三(さんゆうていゆうざ)師匠の目に留まり、弟子入りを持ちかけられたのだ。考えた末、「プロの落語家として芸を磨きたい」という思いから入門を決意。高座名も、「東北六県に華を咲かせる」という意味を込めた「六華亭遊花」に改めた。そのお披露目の公演を4月15日に開催したのがこのホールだったのだ。「そういう意味で、ここが私にとって新たな出発の場所なんです」。
この舞台からふたたび“誕生”した遊花さんだが、名前や所属が変わったとはいえ、落語のスタイルは今までと変わらないのが遊花さん流だ。以前通り、同ホールで毎月1回開かれる「魅知国(みちのく)仙台寄席(よせ)」の高座に上がり、ファンを楽しませている。
「ふつう、江戸落語は江戸弁で演じなければいけないのですが、遊三師匠は『東北弁でいいよ』とおっしゃってくださったんです。これは本当に特例中の特例。それをしっかり受け止めて、東北に住んで、東北の言葉で、東北に落語のおもしろさを広めるのが、私の役目だと思っています」と遊花さん。
そのため、古典落語の舞台設定を江戸ではなく仙台にアレンジしたり、遠野の出身らしく民話を題材に採ったり。また、噺の内容によって遠野弁、仙台弁を使い分けるなど、「東北人が聞きやすい落語」を追求し工夫を凝らす。その姿からは、東北への思い、そして落語に対する思いの深さが伝わってくる。
「仙台をはじめとして、東北各地に定席(じょうせき)(常設の寄席)ができるといい」というのが遊花さんの願いだ。しかも、リーズナブルな料金で気軽に入れる雰囲気の定席があればいいな、と。「会社帰りに街をぶらっとしたら、お囃子(はやし)が聞こえてきて、『ああ、寄席か。ちょっと寄って行こうかな』なんていう光景が当たり前にあるのが理想です。そうすれば街が楽しくなりますよね」。
最近では、「笑い」が健康にいいとも言われている。笑いの力、それも東北の言葉や生活に根ざした笑いによって、東北の人や街が元気になっていくなんて、素敵なことだ。新たな出発の地であるこの界隈から、遊花さんが東北に花をいっぱい咲かせてくれるのをワクワクしながら待ちたい。
掲載:2012年9月14日
- 六華亭 遊花 ろくかてい・ゆうか
- 岩手県遠野市生まれ。「かわのめえりこ」の名でテレビ・ラジオ番組のレポーター、アシスタントとして活躍。1997(平成9)年、東北弁による話芸団体「東方落語」に入門し、「川野目亭南天」を名乗る。その活躍が落語芸術協会に認められ、2010(平成22)年から「魅知国仙台寄席」にレギュラー出演を開始。2011(平成23)年には東北の風土に根差したユーモアによる表現活動が評価され、「宮沢賢治イーハトーブ賞奨励賞」を受賞。2012(平成24)年4月、三遊亭遊三に入門し、「六華亭遊花」と改名。月1回の「魅知国仙台寄席」をはじめとする寄席、地域や学校での落語鑑賞会などに出演し、人気を博している。宮城県名取市在住。