連載・コラム

文化芸術を地域に生かす創造支援事業
2025活動報告会レポート〔1〕

 2年目となった「文化芸術を地域に生かす創造支援事業(地域助成)」。
この事業は「仙台市文化芸術推進基本計画」(2024年3月策定)の重点プロジェクトの一つである「文化芸術の担い手を育む協働プロジェクト」に位置付けられ、多様な主体との連携により社会課題と向き合う公益性の高い文化芸術活動への支援を通じて、仙台市の文化芸術環境の向上や新たな担い手の育成を目指すものです。
 2026年1月12日に行われた活動報告会では、2025年度地域助成のうち「文化芸術と社会の連携推進事業」に採択された12団体が報告を行いました。
報告を行った団体には、昨年度からの継続採択、また、前身の「持続可能な未来へ向けた文化芸術の環境形成助成事業」から取り組みを継続している団体も多く、活動の積み重ねによる新たな展開や、報告会を通じて生まれた交流についての言及もみられました。
 このレポートでは、採択団体から報告された内容の概要と、審査委員からのコメントを前半と後半に分けてお伝えします。

会場:仙臺緑彩館

※助成事業の概要についてはこちらをご覧ください。
https://ssbj.jp/support/chiiki-outline1/

※報告会の概要についてはこちらをご覧ください。
https://mag.ssbj.jp/event/20050/

※昨年度から継続採択された活動には[継続]、新規採択された団体には[新規]と記載しています。
※[新規]には、前身の「持続可能な未来へ向けた文化芸術の環境形成助成事業」での採択経験がある団体
も一部含まれます。

[継続]
(1)山と材のつながりを想像し、関わりを広げるプラットフォーム作り

報告者:建築ダウナーズ

【概要】
木材がどのように山からやってくるのかを可視化し、生活と山との関係を結び直す活動。2022年から森林環境に携わる方々へのリサーチを継続実施し、2024年度には集めたエピソードや言葉を材料や形に反映させた椅子を製作した。
2025年度は、高齢者を対象とした講座で、製作した椅子に座ってもらいながら山にまつわるエピソードを聞いたり、東北大学のトンチクギャラリー(※)でリサーチ結果の展示を行うなど、これまでの成果を開いて関わりを広げることをテーマに活動。今後は山の木材にアクセスする具体的なルートをデザインしたり、書籍やWEBも使って活動を発信していく。

※東北大学青葉山キャンパス 人間環境系教育研究棟1階 トンチクギャラリー

【審査委員より】

藤野委員:毎年着実にステップを踏んでいる。木々が生産され、素材となって使用する者に届く過程を透明化してわかりやすく見せてくれるのが良い。東北大学での展覧会は学生の関心も高かった。「生産者が見える材料を使いたい」という人に情報を共有する窓口、ゲートの役割さえも果たせる広がりを感じた。

ヲザキ委員:木材は、直接関連の無さそうな分野でも必ず使われている、日本人の文化に根付いた材料。生産現場から手元にやってくるまでのプロセスを見える化する試みに興味を持った。実際に利用することで入手経路を作り、その流れを見えるようにするところに可能性を感じた。

[継続]
(2)文化芸術に親しみやすくする為のアクセシビリティピクトグラムの開
発事業

報告者:渡邉デザイン

【概要】
文化施設や文化芸術関連イベント等のアクセシビリティ情報を表示するピクトグラムを作成してWEB上に公開し、さまざまな人が文化芸術に親しみやすい環境づくりを目指す。2024年度に製作したピクトグラムに寄せられた意見をもとに、さらに数を増やし、修正版を製作した。
例えば「筆談ボード有」を示すピクトグラムはもとは筆談ボードだけを描写していたが、人がやりとりしている絵があった方がわかりやすいという意見を受けて修正した。他にも、使用頻度に関わらず要望があったものには対応するようにしている。誰もが安心して使えるよう、WEBサイトに使用事例や使用規約を掲載したり、利用者の声を集めやすい仕様にするなどアップデートを続け、社会の中にあるユニバーサルデザインに目を向けてもらうきっかけを作りたい。

【審査委員より】

藤野委員:ピクトグラムで細かいニュアンスを伝えることにややハードルの高さを感じた。デザインのプロセスや構成システムについても透明性を持って公開すれば、使う側にとってもルールが明確になる。今後の可能性として、さまざまな人の共有知によりデザインをブラッシュアップできるプラットフォームになったら面白いと感じた。

ヲザキ委員:東京オリンピック・パラリンピックの文化プログラムに関わった際も、一般に認知されていない社会的弱者のための情報デザインは課題であり、その中の一つにピクトグラムがあった。利用頻度ではなく必要性があるかどうか、質的なものに重きを置いているところが大事だと思った。同時に、オープンデータとして展開するための持続可能性も大事にしていってほしい。

[継続]
(3)せんだい建築文化DAYS 2025

報告者:Local Places

【概要】
建築や都市環境について観察したり体験する機会を提供することで「建築文化」を育み、観光振興や地域への愛着につなげる。2024年度はスタートアップ枠で採択され、ゲストを招いたシンポジウムと建築スタディツアーを通してプレリサーチを実施した。
2025年度は2日間の「せんだい建築文化DAYS」を実施。①市内の有名建築家の作品を時代背景やデザインのポイントを解説しながらめぐるスタディツアー、②仙台の過去の記憶と今を重ね合わせる映像の鑑賞とトーク、③仙台銀座などの横丁建築をめぐるまちあるき、④建築学生にも協力を得た「好きな空間・建築」のインタビューリサーチをもとにしたトークセッション の4つのプログラムを行った。今後、毎年開催していきたいと思っている。

【審査委員より】

藤野委員:仙台を知ってもらう時に建築から入るのは一つの方法。一つの建築が持つ時代背景や文脈まで掘り下げたり、まちの空間を自分の足でウォークスルーすることで建築同士の関係性を見たり、建築と都市を見る多様な視点が4つのプログラムに織り込まれており、非常に興味深い。

芦立委員:秋田から来たが、仙台はとても歩きやすく、20~30分でもいろいろな景色を楽しめる。素敵な建物も多い。街のありかた、豊かさを捉えるよいきっかけとなる取り組みだと思う。継続していく中でLocal Placesを取り巻く関係者やステークホルダーが増え、交流が広がっていったら素敵だと思った。

[新規]
(4)アート・プロジェクト「Strangers in Sendai」開催事業

報告者:門脇篤

【概要】
少数者の立場に置かれた人々自身がディレクターとなり、サポート・アーティストとともに表現活動を行うコミュニティアート・プロジェクト。障害者、在住外国人、学校や教室以外を選んだ子どもなどに映像作品を制作してもらった。出来上がった作品は2020年に始まり4度目の開催となる「ボーダレス映画祭」で発表。少数者の視点から見て、仙台や日本、身の回りの世界がどのように見えているのか。映像というノンバーバルな手法で切り取った作品を通し、身近にありながら触れられそうで触れられないものに触れる試み。

【審査委員より】

藤野委員:「ふとうこうカフェinせんだいみやぎ」のこどもが作った、ゲーム(Minecraft)実況風の映像を少し見せてもらい、こどもが自分の一番身近なツールを用いて社会とつながる回路を作る取り組みなのだと理解できた。プレゼンの内容が腑に落ち、実際の作品を見に行ってみたいと思った。

芦立委員:映像というメディアによって「ストレンジャー」と呼ばれるひとびとが共通の課題意識や想いでつながり合い、新たな表現や活動のきっかけも生まれるのではないかと感じた。映画祭とはまた別の場所で上映する展開も見え、続いてほしいと思った。当事者が「もっとこういう作品を作りたい」と思った時に次のステップに進める環境があると、より発展しそうだと思った。

[継続]
(5)「つくる、見る、話す、いる ともに表現する場所」を地域にひらく

報告者:特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパン

【概要】
障害のある人が創作や身体表現に主体的に関われる場をつくり、地域に開いていく活動。2024年度からの継続採択で、オープンアトリエの定期的な開催と人形劇による出張ワークショップを実施している。アトリエでは、きょうだい児が一緒に活動できるなど、障害の有無に関わらず参加しやすい場づくりを行い、約4分の1が新規参加者だった。人形劇ワークショップでは、昨年度から継続の福祉事業所のほか、新しい事業所でも、職員へのヒアリングをもとに参加者と即興の人形劇を行った。以前はうつむいて話さなかった人が言葉を交わしてくれるようになったなどの変化も見られた。

 【審査委員より】

アサダ委員:アトリエの活動は新規参加者も増え、「ここでやっている」という場所も見えており、充実して続いているように見える。人形劇ワークショップは内容が充実していて素晴らしいが、アウトリーチ活動としては、求めている人とどうやってつながるかなど、まだ課題があると感じた。

芦立委員:感覚過敏の人がリラックスできる場所や他者と共有する場を持つことにはハードルがあるが、参加者が「自分たちの場」と認識できる空間を作っていることから、運営面の配慮やプログラムの素晴らしさを感じる。効率化ばかり求められる社会で、わからないものに触れ合う機会が積み重なる場があるのは素晴らしいと思った。

ヲザキ委員:参加機会の少ない事業所をわざわざ選定してアウトリーチを行った点は素晴らしい。実施先を増やすには事業所の理解を高めることが課題だと思う。一言で障害と言ってもいろいろな特性があるので、一緒に過ごせる場を作ることにはさまざまな苦労があるだろうと思った。

[新規]
(6)高校生の演劇環境改善サポート事業

報告者:つながれ高校演劇 ステサポ!SENDAI

【概要】
演劇をしている高校生を対象に、スタッフワークの研修会や合同公演の企画、相談窓口の設置などを通して演劇環境の改善を目指す。2023年度から活動を始めたが、10年続く体制づくりを考え、今年度はこれまでの参加メンバーで演劇科などに通う学生で実行委員会を組織し、大人がサポートする形にした。
参加する高校生は非常に意欲的で合同公演への申し込みも増加している。高校演劇をめぐるリサーチでは卒業後も地元で演劇を続けたい生徒が2023年に比べて増加し、継続の成果を感じた。相談窓口はあまり利用がないが、ゲスト相談員を招いた特別日程を作るなど、工夫していきたい。

【審査委員より】

アサダ委員:部活動の地域移行の流れも含め、文化活動がしにくい教育環境の中、顧問の先生や、高校卒業後も演劇に取り組む大学生と連携し、10年続く事務局づくりを目指しているのが印象的だった。理想としては拠点を持てるとよい。相談窓口も含め、サービスが物理的な場所としても見えることが必要なのではないかと思った。

芦立委員:この助成は演劇分野の応募が多く、仙台は演劇の層が厚いことを強く感じた。全体としては減少傾向だが、演劇に対して強い気持ちを持つ高校生が主体的に関われる場を作ることは素晴らしいと思った。大学生と連携することで主体的に関わる若者を育てたのも大きな成果。

ヲザキ委員:高校生がロールモデルとできるような少し年上の先輩と周りの大人たちという3層で展開しているのが特徴的。同時に、受け皿となる大人の環境改善が高校生の環境改善につながる面がある。仙台市の舞台芸術環境について広く考えていく問題提起の事業でもあると捉えた。

[継続]
(7)社会実装へ向けて:福祉領域用のインク開発/Foraging “SENDAI”
Colors:仙台の“色”を探す/持続可能な顔料とメディウムの開発

報告者:YUIKOUBOU

【概要】
2021年から、自然からの採集物や食材を素材に顔料とメディウム(色を素材に定着させるために顔料と混ぜる溶剤)を開発し、工業印刷機に実装する研究を続けてきた。
2025年度はこれまでの活動のつながりからお声がけいただき、福祉事業所で行うシルクスクリーン印刷で使用できるインクの開発研究を始めた。事業所の利用者が毎日の散歩をする際に拾う落ち葉などから色を採集し、インクを製作してそのレシピを共有する。仙台ならではの色を探すForaging“SENDAI” Colorsの取り組みと福祉作業所への実装が図らずも合致した。このほか、引き続きオフセット印刷での実験や他用途への展開の研究、活動の広報・発信にも取り組んでいる。

【審査委員より】

アサダ委員:散歩は福祉事業所にとって重要なレクリエーションであり、そこから色を採集することは障害者福祉が社会と関わる一つの回路になる。顔料を作る工程を通してデザインやものづくりに興味を持つ人が福祉に関わる回路にもなる。このような技術のローカライズ化と工業印刷に実装する汎用化との間で、今後の展開がどうなるのか気になる。

芦立委員:工芸とは、その土地に特有の生活課題と土地 にあるものや素材が紐づいたもの。それを現代社会で展開する姿勢は、新たな工芸的価値と視点を作るきっかけになっていくのでは。幅広い可能性を感じたので継続してほしい。

ヲザキ委員:福祉事業所にノウハウを渡すことで継続可能にすることに納得した。他の発表者にも共通するが、活動のプロセスでの発見や気づきを次につなげているところがよい。

[新規]
(8)みえない人みえるひとが協力して点字を捉え直す仕事づくり

報告者:認定特定非営利活動法人ビートスイッチ 就労継続支援B型事業所 希望の星

【概要】
視覚障害に特化した東北で唯一の就労継続支援B型事業所を運営してきたが、工賃の低さや、利用者の9割が全盲であることによる作業の難しさ、利用者と支援者双方の高齢化などの課題があった。このため、障害のある人と地元のクリエイターをつなぐ「AとW」の協力を得て、点字の魅力や価値を再発見する商品開発に今年度から取り組み始めた。点字の古新聞の質感を活かしたパッケージや照明器具、点字のおみくじ、点字を解読しながら遊べるビンゴカードなどを開発中。遊びの要素がある障害理解のツールを学習教材にしたり、事業所でのワークショップを企画するなど、市民に体験機会を提供する方法も検討している。

【審査委員より】

アサダ委員:社会課題と同時に団体自身が抱える課題に向き合う中で「商品開発」という言葉をどのように捉えるか。ものづくりに限らないプロジェクトやサービスの開発、例えばともに点字に触れる体験機会を作るなども考えられる。そうしたサービスを行政から受託するような方向も含めて広がりを期待したい。

芦立委員:点字は視覚的にも模様としても美しく、さらにさまざまな活用方法を広げられそう。おみくじやビンゴカードを開発する中で見えてきた使用方法の課題などを公開すれば、点字への関わりを開く機会にもなるのではないか。「仙台で点字を見る機会が増えた」と感じるくらい、課題の可視化につながったらよい。

[継続]
(9)聴覚障害のある人のパフォーミングアーツ活動活性化事業

報告者:さぐる・おどる企画

聴覚障害がある人とない人が一緒に参加できるダンスワークショップを開催することで、交流と相互理解を促進し、多様な人が関われる環境を作る活動を2023年度から継続している。2025年度は市内の手話サークルへの出張ワークショップを昨年度に続き行ったほか、聴覚障害についての学習会や、ろう者のアーティストを講師に迎え手話で進行するワークショップも実施。また、在仙の俳優・演出家らと一緒に、手話通訳字幕つき演劇ワークショップをろう者の協力も得て開発し、聴覚障害のある人からの申し込みがこれまでよりも多くあった。今年度の活動をまとめたリーフレットも作成し配布する。

【審査委員より】

アサダ委員:着実に取り組みを進めていると感じる。障害のあるなしに関わらず参加者を集めた時に健常者の割合が多くなるのは共通の課題だが、少しずつ理想に近づき始めているのを感じた。障害者と健常者が「共にやっていく」時に、事務局にも多様な人が参加する体制が作れるかが次の課題だと思う。

芦立委員:参加者の感想で「体があたたかくなりました」という言葉が印象に残った。何かの感覚が欠けると他の感覚が強化されるが、「あたたかくなる」のは気持ちが満たされたということだと思う。チラシのデザインを渡邉デザイン((2)の報告者)に依頼しており、本助成事業を通じた展開が起きていることも素晴らしい。

掲載:2026年4月2日

執筆:谷津智里(Bottoms)、撮影:金谷竜真(野暮れ山暮れ株式会社)

関連URL
(公財)仙台市市民文化事業団のウェブサイトでは、2025年度「文化芸術を地域に生かす創造支援事業」採択事業主催者によるレポートを紹介しています。
https://ssbj.jp/support/grant/report/?y=2025 (外部サイトへ移動します)