インタビュー

表情豊かな唯一無二の風合い『秋保石』

地元の「ソウルストーン」その1

仙台市太白区秋保町でのみ産出される秋保石は、昔から建物の基礎や塀に使われていた、地域の人にとってなじみのあるもの。石や木片が混じる特徴的な石として、近年は内装用の需要が増え、石表面の形状の面白さから「特別な石」として全国的に注目を集めている。その特徴や産出・加工の裏側、人気が高まっている理由について、秋保石の加工・販売を行う「SANWA STONE(サンワストーン)」の代表取締役、千葉孝司さんに話を聞いた。

自然の窪みが作り出す
独自の風合い

まず、秋保石について教えてください。

今から800~600万年前の火山活動によってできた凝灰岩です。はるか昔、このあたりには巨大な火山「白沢カルデラ」が存在していて、大規模な噴火によって大量の火山砕が噴出しました。それらが堆積し固化したのが秋保石です。秋保町の観光名所「磊々峡」も、秋保石が川の水で浸食されてできたものなんですよ。

凝灰岩は全国各地で採れる石ですよね。その中でも、秋保石にはどのような特徴がありますか。

数ある凝灰岩との違いは、何といっても表情の豊かさです。全体的には黄色みがかった白い肌をしているのですが、その中に大小さまざまな石や木片が混ざり、ところどころに窪みもできています。この風合いこそが秋保石の最大の特徴。噴火前の地層に砂利層があって、それを巻き込んで固まったと考えられます。炭化した木片や粘土質の土が含まれているものもあって、同じ表情の石は一つとしてないんですよ。
凝灰岩は、優れた調湿性や耐火性を持ち、軽量という特徴もあります。それに加え、秋保石に含まれている天然鉱物「ゼオライト」には、脱臭作用、防腐効果があることもわかっています。まさに、内装の壁や床などに適した建材なんですね。凝灰岩は一般的に加工がしやすいのですが、その反面、やわらかいので風化もしやすいんです。その点、石や木片が一緒に固まった秋保石は硬くて丈夫。風化も穏やかなんですよ。

石の中にできた窪みは、巻き込まれていた木片が風化したり切断の際にこぼれ落ちたりした跡。窪みによってできる陰影も温かみを演出する。

やわらかい岩石の中に固い石や木、粘土質が混ざっているわけですから、採掘や加工が難しそうですね。どのように採掘しているのですか。

一般的な凝灰岩と同じ切断機では、すぐに刃がダメになってしまいます。そのため、秋保石専用の機械を使って石の層を上から下に掘り進めています。具体的には、まず碁盤の目状に刃を入れて切れ目を作り、その後、底の部分に楔を打ち込んでひたすら叩いて切り出すんです。実際に切ってみないと石や木片がどんな模様を作っているのかわかりません。それもまた面白いですよね。

中には、大きめの枝や木炭などが混ざっていることも。「製品になっているものも、割ってみるとその中に面白い木片や石が入っているかもしれません。そんな想像を巡らせるのも楽しいですよね」と千葉さん

時代を経て変化する
秋保石の価値

秋保石が使われ始めたのはいつ頃なのでしょうか。

コンクリートが一般に普及する前の大正初期と言われています。当時は、建物の基礎や塀、蔵、かまどなどに使われていたようです。秋保町から長町まで、秋保石を運搬するための秋保軌道というものがあって、まずは馬車を使った運搬が始まり、その後、電車で運ばれました。最盛期だった昭和30年代には300人の職人が採掘していたそうですから、秋保は石の町だったんですよね。とはいえ、そのほとんどが県内で消費されていて、他県には流通しなかったので、全国的に秋保石の知名度は低かったんです。ここ数年でようやく県外でも認知されてきたと感じます。

秋保町内にある秋保石の石切場。桜井石材産業所有のこの場所では60年前から採掘が始まった。

秋保石が見直されている理由は何でしょうか。また、どのように利用されることが多いのですか。

一番の魅力は、他の凝灰岩にない模様の美しさです。自然がつくり出した表情は唯一無二で、温かみもあります。
今は加工技術が発達して壁材としても販売できるようになったので、用途としては、壁や床といった内装の需要が増えています。それから、庭石としても人気ですよ。秋保石は、長い間雨風にさらされると表面が黒く変化するのですが、以前、お寺の庭師から「黒くなった独特の味わいが素晴らしい」と言われたこともありました。
住宅だけでなくホテルや店舗でも採用されていて、私が秋保石に携わるきっかけになったのも、常連だった焼き鳥店でカウンターに使われていた秋保石を見て「かっこいいな」と思ったのが始まりでした。この石材はどうやって作ったんですかとお店の方に聞いたら「作ったんじゃなくて自然の石だよ」との答えに驚きまして。人工石かと思ったものが、自然の力でできていることにとても興味が湧きました。

磊々峡の近くにある事務所兼ショールーム。古い建物をリノベーションしており、外壁の一部や外構にも秋保石を採用。建物の基礎には元から秋保石が使われていたという。

見直される秋保石の魅力
仙台を代表する産業に

千葉さんはもともと建設関係のお仕事をされていたのですよね。なぜ秋保石を扱う会社を立ち上げたのですか。建設業のときに秋保石を扱っていたとか?

いえ、焼き鳥店で見るまで秋保石の存在は知りませんでした。店のオーナーのお父さん(桜井石材産業・桜井政夫さん)が秋保石の採掘を一人でやっていると聞いて、「自分も今の仕事をリタイアしたらそんなことをして暮らしたいな」なんて、なんとなく思っていたんです。でも当時、秋保石の産業自体が衰退してきており、「自分のリタイアを待っていたら、秋保石の産業自体がなくなってしまうのではないか」という危機感もありました。桜井さんがお元気なうちに秋保石を復活させなければ採掘場が無くなってしまうと感じて、すぐに動き出すことにしました。まず栃木県に行って、同じ凝灰岩である大谷石の採掘・加工現場で勉強をし、SANWA STONEを立ち上げました。

秋保町にあるSANWA STONEの事務所にて。カウンターも壁も秋保石。タイルとは違う、秋保石独特の意匠が部屋に温かみのある表情をつくる。

千葉さん自身、それだけ秋保石に魅力を感じているのですね。この石をもっと広めるために、今後の展開を教えてください。

秋保石が採れるこの山を維持するには、ある程度の出荷量が必要です。建築資材として秋保石が当たり前の選択肢になるために、もっと知名度を上げていきたいですね。建設業界だけでなく多くの方にも知ってほしいので、公共施設などにも使われる資材になったらうれしいです。
また、自社ではオリジナルの一輪挿しやコースター、オブジェなども作って販売しています。これまで、材質の問題もあって、技術的に細かい加工が難しかったのですが、研究と経験を重ねたことで、きれいな曲線も出せるようになりました。秋保町の事務所兼ショールームに展示しているので、ぜひ秋保石のすばらしさに触れてほしいですね。

自社でデザイン・加工をしている一輪挿し。秋保石は、生活雑貨の素材としても可能性を秘めている
事務所入り口に設置された看板石碑も秋保石製。

掲載:2026年1月16日

取材:2025年10月

取材・原稿/関東 博子 写真/寺尾 佳修

千葉 孝司 ちば・たかし
秋保石の加工・販売・施工のほか、内装・外構・土木工事も行う「SANWA STONE株式会社」の代表取締役。以前は内装業を営んでいたが、15年前に秋保石と出会い、石そのものの魅力と事業としての可能性を感じて2020年に同社を設立。2025年1月にはせんだいメディアテークで「秋保石展」を主催した。