※報告会のレポートについてはこちらをご覧ください。
https://mag.ssbj.jp/col/16444/(レポート1)
※助成事業の概要についてはこちらをご覧ください。
https://ssbj.jp/support/kankyo-outline/
※報告会の概要についてはこちらをご覧ください。
https://mag.ssbj.jp/event/15626/
第1グループ
第1グループでは、社会の中ですぐ近くにありながらもなかなか交わらない人と人との関係性をつなぎ直そうとする3つの取り組みが発表されました。
事業概要
(1) 仙台げいのうの学校
報告者:縦糸横糸合同会社(仙台げいのうの学校)
【概要】
仙台を中心に民俗芸能の担い手と市民や企業、行政をつなぐことで、安定的な運営や継承者の育成といった課題を解決する方法を探る。2022年度からの継続実施で、民俗芸能についての講座や保存団体の訪問と交流、また保存に留まらない発展や活用の可能性についての対話を多様な主体が参加して行った。
(2) 多世代で地元学のタネを育てていくアーカイブ事業「ここダネ!」
報告者:風の時編集部
【概要】
地域や家庭に眠っている仙台の街の古い写真を同じ場所の現在の写真と見比べることで、住民の地域文化への興味関心を引き出し、多世代交流による地域文化の保存と活用を促す。市民センターや小中学校と連携して開催することで活動を広げつつ、今後それぞれの地域で独自に開催できるよう支援していく。
(3) 領域横断的手法による地に根差したインタラクティブ・アートの研究と実践:
宮城県気仙沼市の中山間地域で受け継がれてきた人と山の関係性を対象に
報告者:田中望(アーティスト、東北工業大学ライフデザイン学部講師)
【概要】
気仙沼市の中山間地域を対象に山の暮らしをリサーチし、消えゆく山の生業を記録・継承するための企画を住民と共同で考える。現地でのフィールドワークを合計で5回実施し、炭窯の取材や林業に親しむイベントの運営を補助。リサーチの成果をもとに作品を制作し展示発表を行う。
審査委員からのコメント(抜粋)
・それぞれの企画が場所と人を結びつける取り組みになっていることが印象的。
・(2)「ここダネ!」は、仕組みができればいろいろなところに広まりそうなところが魅力。
・(3)「インタラクティブ・アート」は、リサーチから作品ができるプロセスをどのように編集して見せるかで共感されるかが決まるので、そこに工夫があるとよい。
第2グループ
第2グループでは、地域や社会との接点が持ちづらくなっているひとびとが、パフォーミングアーツの力によって自分らしく振る舞える場を創ろうと試みる3つの取り組みが発表されました。
事業概要
(4) 「仙臺まちなかシアタープロジェクト」~地域共生と仙台の名物企画を目指して~
報告者:一般社団法人東北えびす
【概要】
市内外の飲食店を会場に「朗読・劇・落語」を連続上演する鑑賞型・創造発信型事業。社会課題とアートを考えるトークイベント、アート情報チャンネルYouTubeの新設も行い、幅広い市民との交流や発信を促進する。支援団体と連携し、不登校の子どもたちにも鑑賞機会を提供した。
(5) アトリエつくるて&みんなでつくるよ広場の人形劇!
報告者:特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパン
【概要】
障害のある人が主体的に関わることができる創作や身体表現の場を通じて、障害のある人とない人が出会う場を作る。造形活動と人形劇の創作を楽しむ場の継続的な開催に加え、展覧会や場づくりに関する研究会を通じて活動の手法を社会に開き、多様な市民が文化芸術に関わる環境形成に貢献。
(6) 聴覚障害のある方と一緒に踊るダンスワークショップ「さぐるからだ、みるわたし」
報告者:渋谷裕子(さぐる・おどる企画)
【概要】
聴覚障害がある人とない人が一緒に参加できるダンスワークショップを開催し、交流や相互理解を通じて多様な人がパフォーミングアーツに関わることができる環境を作る。ワークショップの継続的な開催を通して、ファシリテーターを務めるアーティストの育成にも同時に取り組んだ。
審査委員からのコメント(抜粋)
・3団体とも、さまざまな背景がある人に対し丁寧に場を開いている。
・(4)「仙臺まちなかシアタープロジェクト」は、演劇を通じて不登校の子どもと飲食の場とを接続したのがよい。今後、周辺地域コミュニティへの波及効果も生まれるとよいのでは。
・(5)「アトリエつくるて&みんなでつくるよ広場の人形劇!」は的確な問題意識を持ち継続的にプロジェクトを運営しているのが素晴らしい。今後は行政関係者など制度設計に関わる方々にも参加してもらいたい。
・(6)「さぐるからだ、みるわたし」は昨年度からステップを踏みつつ着実にプロジェクトを進めている印象。タイトルのつけ方もよい。参加者の経験をどう日常に展開させるのかについても興味深い。
第3グループ
第3グループは、仙台・宮城の芸術文化を次の時代に継いでいくため、若い世代を育む視点で行われた3つの取り組みが発表されました。
事業概要
(7) てとつてと
報告者:仙台演劇研究舎
【概要】
高校演劇部員を対象とした演劇ワークショップや講座の開催に加え、卒業後の進路についての相談窓口の開設を通して、高校卒業後も演劇活動を続けられる環境の創出に取り組む。部活外の活動へのハードルを下げるため、複数校生徒による合同公演も企画・実施。
(8) 演劇教育に関わる人材育成と普及事業
報告者:一般社団法人 PLAY ART!せんだい
【概要】
演劇的手法を用いたコミュニケーション教育の普及を図り、実践を通してファシリテーターを育成する。中学校や高校でのワークショップ開催のほか、ワークショッププログラムの企画やファシリテーションのノウハウについて学ぶ勉強会や、演劇教育の有効性について語り合うフォーラムも開催。
(9) 紡いでいく音たち 〜次世代へ、心豊かな環境をつなげる音楽の力〜
報告者:一般社団法人ミュージックプロデュースMHKS
【概要】
音楽をデジタルで聴くのが当たり前になった今、主に子どもたちが生のクラシック演奏に親しむ機会を提供するとともに、若手の音楽家や企画運営者の育成を図る。コンサートの開催のほか、仙台のクラシック音楽の環境について話し合うパネルディスカッションやトークライブを開催した。
審査委員からのコメント(抜粋)
・いずれの取り組みも学校現場や行事との連携が欠かせない。今後、仙台市や市民文化事業団との連携が不可欠になると思うので、行政側にも方法を考えてもらいたい。
・(7)「てとつてと」は高校生が将来の進路を考えるための相談窓口になっているのがよい。近年重要になっているコンプライアンスなどの情報も提供できるとよいのではないか。
・(9)「紡いでいく音たち」はクラシック音楽に親しむ場を作る際に、誰を対象にするのか(子どもなのか、若者なのかなど)もう少し明確にして取り組むとよいかもしれない。
第4グループ
第4グループは、地域の風土やそこで生活するひとびとの息づかいを、クリエイターの創造性によってより多くの人の生活に届けようとする3つの取り組みが発表されました。
事業概要
(10) Foraged Colors Exhibition & Workshop / Sendai Colors 海の色を探す(Foraging Ocean Colors) / 持続可能な顔料とメディウムの開発
報告者:YUIKOUBOU
【概要】
自然からの採集物や食物から顔料とメディウム(色を素材に定着させるために顔料と混ぜる溶剤)を作り、新たなインクとして現行の印刷機へ実装するプロジェクト。環境に負荷をかけず、土地ごとの「色」を作ることができる。前年度に引き続き研究・実験を進めるとともに、在仙の親子やクリエイターと仙台の海岸で色の素材を採集・顔料化するワークショップを実施し、展覧会を開催する。
(11) 森林環境と木材に関するリサーチと空間デザインによって風景と材料のつながりを捉えなおし、人々の声を交換するプロジェクト
報告者:建築ダウナーズ
【概要】
普段、家具や什器の制作に使用している木材と山の風景との繋がりを想像するため、森林環境に携わる方々へのインタビューを実施。丸森町で自伐型林業に取り組む団体から入手した木材で制作を行い、その制作過程やリサーチの記録をオープンスタジオで展示し、トークイベントも行う。
(12) アートを仕事にするネットワーク環境形成事業
報告者:一般社団法人 アート・インクルージョン
【概要】
障害福祉施設によるアトリエの工賃が極端に低い現状から、仙台市内のクリエイターらとネットワークをつくり、商品開発に取り組む。月1回ネットワーク会議を開催し、お互いの現場を訪問して相互理解を深め、商品のプロトタイプを作成してポップアップストアでの販売を行った。
審査委員からのコメント(抜粋)
・(10) 「Foraged Colors Exhibition & Workshop」は、原理的なことがしっかりしていてこれからが楽しみ。
・(11)「森林環境と木材に関するリサーチと空間デザインによって風景と材料のつながりを捉えなおし、人々の声を交換するプロジェクト」は、リサーチ現場の手業や作業の様子などを伝えるため映像の活用も検討してはどうか。
・(12)「アートを仕事にするネットワーク環境形成事業」は、商品の制作プロセスを伝えることにより、かかっている手間や作者のスキルを理解してもらえれば、同情を誘う文脈から離れて正当な評価・工賃につなげられるのではないか。